日本では「表面利回り」が提示されるが・・・
不動産取引の透明性が追求される背景には、アメリカ人ならではの投資マインドがあると感じています。日本では投資用不動産を購入する際、不動産業者は物件価格と設定家賃から算出される”表面利回り”を提示します。しかし、アメリカでは基本的に表面利回りは見ません。不動産を維持するのにかかる固定資産税や都市計画税、管理費、修繕積立金など、あらゆる経費を差し引いた”実質利回り”で、その物件の収益性を見るのです。だからこそ、思わぬ瑕疵や不備が後々発見されないように、第三者に依頼して徹底的に調査するのです。
アメリカでは実質利回りを提示するのが一般的であるため、日本人はアメリカ不動産の本当の魅力に気づきにくいかもしれません。例えば、日本の不動産業者が首都圏のワンルームマンションを売り出す場合、5〜6%の表面利回りをうたって購入者を募集しますが、アメリカの不動産業者は実質利回りを提示します。カリフォルニア州の人気都市であるロサンゼルスやサンフランシスコ、サンノゼあたりの物件になると、利回りは3%台前半です。私が特に注目するオハイオ州の物件でも4%台です。この利回りは当然、実質利回りなのですが、表面なのか実質なのかも確認せずに「そんなものしか出ないの?」という顔をされる日本人は少なくないのです。
時価評価額に対して約2%かかるアメリカの固定資産税
前述したように、アメリカの不動産には日本よりも高い固定資産税がかかります。州によっても異なりますが、時価評価額に対して2〜2.5%かかるので、5000万円の物件だと年間100万円以上の固定資産税がかかる計算です。この経費負担は小さくありません。だからこそ、必ず実質利回りで、その物件価値を評価するのです。
なお、私が勤務するオープンハウスで紹介する物件に関しては、すべての経費の詳細を掲載した収益試算書を提示しています(サンプルは書籍『戦略的アメリカ不動産投資』第4章の図表14、15参照)。フルローンの場合、70%をローンで賄った場合、すべてキャッシュの場合など、さまざまなケースでの購入シミュレーションが可能です。家賃収入から経費を差し引いた純収益(NOI=Net Operating Income)をもとに、ローンの支払いや減価償却分等を差し引いて、税効果まで加味したキャッシュフロー予想などもはじき出すようにしています。アメリカでは、我々エージェントにも、あらゆる情報をオープンにする姿勢が求められているからにほかなりません。