前回は、人材の定着・採用に活かせる「人材開発支援助成金」の概要を解説しました。今回は、「人材確保等支援助成金」の受給条件や注意点を見ていきます。

専門的な技術習得を目的とした職業訓練の実施が条件

「人材開発支援助成金」最後の三つ目は「人材開発支援助成金」です。これは労働者のキャリア形成を図るために、専門的な技術や知識の習得を目的とした職業訓練を行った際に支給される制度です。

 

この制度の一部は中小企業のみが受給対象となっています。社員のスキルアップ支援は日本企業全体の課題でもありますから、中小企業はこの制度を積極的に利用して教育制度を整備してほしいと思います。

 

この助成金は次の4つのコースが柱となっています。各コースで受給できる金額は図表のとおりです。

 

〈特定訓練コース〉

労働生産性の向上に資する訓練、若年者に対する訓練、OJT(On-The-JobTraining:職場訓練)とOFF―JT(Off-The-JobTraining:職場外訓練)を組み合わせた訓練など、最低10時間以上の訓練について助成されます。

 

〈一般訓練コース〉

特定訓練コース以外の20時間以上の訓練に対して助成されます。

 

〈教育訓練休暇付与コース〉

有給教育訓練休暇等制度を導入し、労働者が当該休暇を取得して訓練を受けた場合に助成されます。

 

〈特別育成訓練コース〉

一般職業訓練、有期実習型訓練、中小企業等担い手育成訓練を導入し、実施した場合に助成されます。

 

[図表]人材開発支援助成金

※1◦ 認定実習併用職業訓練において、建設業、製造業、情報通信業の分野(特定分野)
の場合
  ◦ 若者雇用促進法に基づく認定事業主又はセルフ・キャリアドック制度導入企業の
場合
※2◦有期契約労働者等(有期契約労働者および無期雇用労働者)が対象
※3◦ 一人当たり。訓練時間数に応じた上限額を設定。(中小企業等担い手育成訓練は対
象外)
※1 ●認定実習併用職業訓練において、建設業、製造業、情報通信業の分野(特定分野)の場合
   ●若者雇用促進法に基づく認定事業主又はセルフ・キャリアドック制度導入企業の場合
※2 ●有期契約労働者等(有期契約労働者および無期雇用労働者)が対象
※3 ●一人当たり。訓練時間数に応じた上限額を設定。(中小企業等担い手育成訓練は対 象外)

「訓練計画の提出時期」などが決まっている点に注意

(受給できる会社の条件)

●雇用保険に加入している

 

●事業内職業能力開発計画および年間職業能力開発計画(計画)を作成し、社員に周知している

 

●労働局に計画届を提出している

 

●前記のいずれかに該当する、計画に基づいた職業訓練を行うこと、または制度を導入・実施すること

 

ほかの助成金制度と同様に事前の手続きが必要で、かつ訓練計画の提出時期、支給申請の時期が決まっています。各種の手続きでミスのないよう注意して活用してください。

 

以上、紹介した三つの制度のほかにも中小企業が活用できる助成金は複数用意されています。

 

例えば近年、国は長時間労働の是正を企業に働きかけています。そのため残業の削減などの職場改善に取り組む企業に対して支給される「時間外労働等改善助成金(時間外労働上限設定コース)」も活用しやすい助成金の一つといえます。身近にいる専門家に相談されるといいいでしょう。

本連載は、2018年5月28日刊行の書籍『中小企業の人材コストは国の助成金で払いなさい』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

中小企業の人材コストは国の助成金で払いなさい

中小企業の人材コストは国の助成金で払いなさい

寺田 慎也

幻冬舎メディアコンサルティング

経営者は公的支援をフル活用して業績を向上させよ! 税理士・社労士資格を有する経営コンサルタントが豊富な実例をもとにわかりやすく解説。

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