近年は業界の雇用環境向上のため、支援も手厚いが・・・
助成金は国の雇用政策とリンクしています。そのため助成金は、雇用政策の理念や方向性にマッチした取り組みを行っている企業に支給されると理解してください。
例えば、近年では働き方改革による「生産性アップ(キャリアアップ)」や「育児休業」に対する助成金が手厚くなっています。また、慢性的な人手不足が叫ばれる建設業界での人材確保と育成が喫緊の課題となっているため、国は公的支援を利用して業界の雇用環境を良くしようとしているのです。
さらに全体の傾向として、いま国は助成金を通じて中小企業を強くしようとしています。その裏付けが「生産性要件」です。
連載第13回で詳述しますが、2017年より助成金を利用した企業が生産性を向上させた場合、助成の割り増しが受けられるようになりました。その生産性要件の一つに「営業利益」が含まれていることからも、雇用環境の改善を本業の稼ぎにまで結びつけた企業にプラスアルファの”ご褒美”を与えるという、国の方針を読み取ることができます。
つまり国は助成金を通じて、中小企業に「たくさん稼いで、強くなってくれよ」とメッセージを送っているのです。その意思を受け取るかどうかは、中小企業経営者の判断にかかっています。
情報確認や手続きを面倒がり、敬遠する経営者も
このように、国は助成金制度によって中小企業を手厚く支援しようとしていますが、実際には十分活用している中小経営者は多くありません。主な理由は次のとおりです。
●そもそも助成金を知らない
●自社の企業規模では助成金はもらえないはず
●助成金の存在は知っているが、何が自社に当てはまるか分からない
●受給手続きが複雑で考えるのも疲れる。とても対応できない
実際にはそんなことはありませんが、しっかりと情報を確認せず、勘違いしたり、さじを投げたままにしたりといった人が多いのです。助成金は小規模の企業でも受給できるうえ、雇用関係の助成金は労働者を雇用している限りもらえるチャンスがあります。知らないばかりに損をするほどもったいないことはありません。
そのうえで理解しておくべき点がもう一つあります。助成金の受給までの手続きは、主に社会保険労務士の専門範囲だということです(補助金は主に経営革新等支援機関となっている税理士が専門範囲)。確かに申請手続きには複雑なものもありますが、経営者がすべてを行う必要はありません。経営者は本業に専念し、手続きは専門家である社労士に任せる。そうした棲み分けをすることで不備も少なくなり、確実な受給につながります。