主に「雇用関係・事業開発」の二つの種類に分けられる
ブランド力、ネームバリュー、資金力・・・。
どれをとっても大企業に太刀打ちできない中小企業にとって、採用条件や労働条件の格差を縮める大きな武器となるのが本書のテーマである「助成金」の活用です。中小企業が柔軟に使える助成金を活用すれば、コスト負担を抑えながら「ヒト」の課題を解決に導き、会社を成長軌道に乗せることができます。
「助成金」とは、国や地方公共団体から交付される返済義務のないお金のことで、その種類は大きく二つに分けられます。
●雇用関係の助成金
主に厚生労働省が管轄しています。この助成金の目的は、労働者の雇用環境を改善・安定させること。従って新たに社員を雇い入れたり、労働環境を整備したり、社員教育や研修を行ったりした際に受給対象となります。
●事業・研究開発などに関する助成金
主に経済産業省が管轄しています。この助成金の目的は、企業の事業展開を支援すること。例えば新しい事業を始めるために機械設備を導入したり、新しい商品やサービスを開発したりする際に受給対象となります。その他、販路拡大や海外進出にも活用できます。なお、このタイプの助成金は一般に「補助金」と呼ばれます。
以上のうち、本書がテーマとしているのは「雇用関係の助成金」です。もう一方の「事業・研究開発などに関する助成金(以降、「補助金」)」については、第4章以降のケーススタディで一部紹介するので参考にしてください。
年間約10~300万円が、比較的簡単に受給できる
さて、本書が「雇用関係の助成金(以降、「助成金」)」を対象としている理由は二つあります。一つは、中小企業の最大の経営課題である「ヒト」の対策を目的とした公的支援である点。そしてもう一つは補助金と比べて使える機会が多い点です。
[図表]雇用関係の助成金と事業・研究開発などに関する助成金の違い
助成金には随時公募されているものが多く、要件を満たせば受給できるなど、比較的簡単に手に入れることができます。例えば、キャリアアップ助成金の正社員化コースなら、一企業で年約10万〜300万円が受給できます。対して補助金の受給額は50万~3000万円。公募時期が年に1~2回と少なく、しかも厳しい審査に通らなければ受給できません。つまり、中小企業が人材活用のために利用するという面では、助成金のほうが使い勝手が良いのです。
助成金をフルに活用しながら人材力と組織力を高め、事業活動に勢いをつけることで、より金額の大きな補助金受給のチャンスを探っていく。こうして助成金と補助金をうまく使い続けることで、会社を継続的に成長させることができるでしょう。