今回は、資金繰り表の活用で「苦し紛れの短期借入れ」を断ち切るポイント等について見ていきます。※本連載は、資金繰り表を活用した経営管理の普及を目指す、株式会社アセットアシストコンサルタントのCEO兼統括コンサルタントの大森雅美氏が、経営者が知っておくべき会社の数字の読み解き方を解説します。

2月~3月、決まって業績が厳しくなる企業は多いが…

筆者の周辺では、4月以降は業績の回復が見込めるものの、2月から3月が大変厳しい状況の企業が多くあります。そんな状況の時、一般的には運転資金としてつなぎの短期融資を考えたくなるものですが、安易な資金調達になっていないか熟考する必要があります。

 

融資を受けられたとしても、その融資が本当に中長期的に正しい判断であるとは限りません。融資を受ければ、返済が当然あります。来年の同月に、同じ状態になった時に同じ行動をとれば、さらに借入は増加し続けます。その時に借入ができなければ、倒産まで視野に入って来てしまいます。

 

資金繰り表をつけていれば、前年の実績を基に毎月の営業収支の利益から、税金を支払い、借入の返済をした後、現預金の残高がいくら積み増せて行けるのかを把握できます。積み増せている分しか返済に充てられる原資がないことになります。その返済原資を超える借入(返済)の積み増しは、資金繰りを圧迫しますから、業績を上げる必要に迫られ、現実離れした売上目標の必達、人件費の削減、経費の削減など社内環境を悪化させ悪循環に入ってしまいます。

 

そうならないように、資金繰り表でキャッシュフローを確認しながら、先の見える窮地の時は、売掛債権の回収や買掛金の支払い条件の変更、銀行返済条件の見直しなどで乗り切れるなら乗り切った方が中長期的には企業にはベターな選択の場合が多くあります。

 

さて、2、3月に厳しいのは一部の企業だけなのでしょうか。2017年10-12月期GDP速報を見ると国内全体として厳しかった事の影響のようにも読み取れます。

 

経済報道では、企業の業績は好調、雇用統計も改善、株価は高値(安定)傾向、円安維持、金融緩和継続で景気回復感満載の見出しが躍っています。

 

日本のすべての人に景気が良くなった実感を持たせることは不可能でも、もう少し街中に景気が回復している雰囲気が漂っても良いのではないかと思います。

 

2017(平成29)年10~12月期四半期別GDP速報(1次速報値)
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2017/toukei_2017.html
2017(平成29)年10~12月期四半期別GDP速報(1次速報値)

マンネリ化した経営者は、挑戦する若手に思いを馳せよ

中小企業庁、東京商工リサーチなどで開業・廃業の調査を定期的に行っているところによれば、2008年のリーマンショック以降開業(新規設立)は増加の傾向があり、年間約12万社の会社が誕生しています。廃業(解散)は年間4万社弱で推移しているようです。

 

いつの時代でも開業(新規設立)する経営者が誕生しています。廃業(解散)会社は倒産状態だけでなく、優良会社の事業承継で、後継者難も要因として増加しています。

 

新規設立会社数と、優良企業の事業承継課題に目を向ければ、時代の移り変わりに変化に沿うように行動していれば、チャンスはいつの時代でもあるものだと思える希望の持てる統計数値です。

 

創業○○年という既存の企業で、業務も環境もマンネリ化してしまっている会社の経営者の方がいらっしゃいましたら、年間12万もの新設の会社が、世の中の変化にチャンスを見出し挑戦している事に思いを馳せてみましょう。既存の会社は、業界でアドバンテージがある分、新設会社より有利な事も多いはずです。新設会社の良き先輩として、負けずに上を向いて進みましょう!

本連載は、株式会社アセットアシストコンサルタントCEO兼統括コンサルタントの大森雅美氏のブログを抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://masami-omori.com/column/

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