年金の「本来の目的」が形骸化した日本社会
この記事は、日々のビジネスシーンで交わされる「景気はどうなの?」という鉄板の雑談に貢献できるよう、GDPと人口統計資料をもとに情報を発信しています。
現在、日本のGDPの総額は約540兆円、総人口は約1億2,620万人です(下記図表1)。こちらを念頭に話を進めます。
6月の話題は、何といっても金融庁の発表により明らかになった「将来の年金不足」問題でしょう。資産形成をうながす報告書によって、「人生100年時代」における老後の生活資金は「2000万円必要」との試算が出てしまったのです。
終身雇用時代にサラリーマンとして働き退職し(当然いくばくかの退職金も支給され)、持ち家がある世帯でさえ、今後年金の受給だけでは、最低限の生活もままならない・・・。
これは降って湧いた話ではなく、数年前より、年金制度に対する不信感は高まっていました。少子高齢化が進む現在で、年金本来の目的である「世代間での支え合い」を実現するためには、労働年齢層も、年金受給者層も我慢をしなければならない時代に突入したということです。
労働年齢層の賃金は減っているにも関わらず、社会保険料の料率が上がっています。また、年金受給者層においては、母数が増えている分、1人当たりの受給額は減少しています。働き手が少なくなり、年金を納める人の数が減るなかで、貰う人の割合ばかりが増え続けていくのですから、これは当然の結果といえます。このような状況で、我々はどう対処していくべきなのでしょうか?
「需要過多」の市場は、もうどこにもない
倹約をして、貯蓄・資産運用・保険の積立をするなど、「お金を守る」ための手段を提供する商品は多くあります。しかし、いずれにしても、今現在のキャッシュアウトは免れません。
もし、「老後資金の心配はないけれど、悠々自適な生活が約束されているわけでもない」という状況であるのなら、いっそのこと生涯現役で仕事をし、収入を得続けることを目標とするのはいかがでしょうか。
事業主の方が大半の読者層と想定されますので、いうまでもなく、働き続けざるを得ないかもしれません。では、そうでない方が今すべきことは何でしょうか。
個人事業主からでも、何か商品を提供する側にまわるという選択肢はいかがでしょうか。もちろんリスクは伴いますが、年金不安を解消するためには、積極的に考えてもいい選択肢かもしれません。
日本の経済環境について述べると、GDPでみてもわかるように、国内の総生産規模は年率換算でも0~2%程度の大きさでしか増えていません(下記図表2)。
高度成長・バブル景気を経て、人々にモノが行きわたった結果、現在の日本では需要が少なくなった、つまり「成熟した経済環境」になったといえます。
消費者のニーズが多様化した今、何を仕事として提供しても、需要過多で儲かるというわけにはいかなくなっています。しかしながら、そのような現実がありながらも、約540兆円規模の経済活動は実際に行われているわけです。諦めさえしなければ、チャンスはきっとあるはずです。
大森 雅美
株式会社アセットアシストコンサルタント
CEO兼統括コンサルタント