大規模修繕工事の基本3原則は「公平・透明・合理」
理事として大規模修繕工事に取り組む場合の基本原則について取り上げます。記述はすべて常識的なことばかりですが、そのために意外となおざりにされることも多く、ひいては大規模修繕工事が失敗する要因ともなりかねないものばかりです。ぜひ何度でも、確認を怠らないようにすべきでしょう。
数多くの大規模修繕工事にコンサルタントとして立ち会ってきた経験から、どんなケースにも当てはまるベースの部分は「公平」「透明」「合理」だと私は確信しています。常にこの3原則を忘れることなく、何か迷うような事態が発生した場合には、この原則に戻ることをお勧めします。
共有財産である「修繕積立金」をいかに活用するか?
では、3つそれぞれについて、もう少し詳しく説明します。
原則① 公平(管理組合員全員の公平)
大規模修繕工事の結果は管理組合員全員に公平でなくてはなりません。その基本にあるのは、管理組合の共有財産である修繕積立金は、その全員に対して公平に使われるべきという大原則です。そう聞けば誰もが納得する内容ですから、実施も簡単そうに思えます。ところが実際には、この「全員に公平」というのは意外に難しいものなのです。大規模修繕工事に関して発生するクレームには、この「公平」についての問題が少なくありません。
原則② 透明(情報の共有と管理)
大規模修繕工事を進める場合、それに関する多くの情報を公開・伝達することが理事会にとって大切な業務となってきます。ともすると執行機関である理事会だけで進めてしまいがちですが、実は情報を住民にわかりやすく伝えることが大規模修繕工事における成功の鍵といえます。
広報活動が非常に大切な仕事であることを、しっかりと意識してもらいたいのです。大規模修繕工事を順調に進めているマンションの多くには、理事会が広報活動を的確に行なっているという共通点があります。「情報を伝える」というと簡単に思えるかもしれませんが、注意しなければならないのは、ほとんどの住民は建物の修繕に関して何の知識もないという点です。
わかりやすく内容を整理して伝達することが必要ですが、これはなかなか難しいことでもあります。知識のない人にもわかりやすく伝えようとする努力を優先していくことで、大規模修繕工事はスムーズに進行します。
原則③ 合理(無駄を排除し費用対効果を高める)
繰り返しになりますが、修繕積立金は管理組合全員の共有財産です。だからこそ、無駄なく有効に使うことが求められます。単に安価であればいいというわけではなく、もっとも有効なお金の使い方を考えなければなりません。
実際、専門のコンサルタントにとっても、この「合理性の追求」は一番難しい点です。修繕にやりすぎはありません。あれもやったほうがいい、これもやったほうがいいと、さまざまな部分の修繕が盛りだくさんになるのが通常です。しかし積立金は限られていますから、取捨選択をしなければなりません。
技術的な部分では、やるべきものは比較的簡単に決定できます。その次の段階にあたる、やらなくていいもの、やらないもの、先延ばしするものを決めることこそが難しいのです。そのような場合は合理的な判断を下すことが理事会に求められているといえるでしょう。