マンションの保全技術は「システム的に」機能している
「なぜ定期的に大規模修繕工事を行うのか?」という質問を受けることがあります。前に挙げた合理性の話とも関連しますが、大規模修繕工事の時期に差しかかっていても各マンションの事情で、本当にその工事が必要かどうか迷うケースがあります。
たとえば、修繕工事の予定箇所に該当していても、ここはもう少し先延ばししても良さそうだ。こちらは数年前に先行して修繕したばかりだし……などといった理由で、その費用を次の機会に回した方が合理的ではないかと考えてしまうのです。
もちろん、それも一理ありますが、別の観点からいうとその考え方には非常に大きな問題があります。それは次のことが理解されないことによって起こってしまう事態といえます。
実はマンションの保全技術は、システム技術なのです。細かい部位や分野ごとの耐用年数や仕様を考えすぎることで、結果的により重要で総合的な保全システムを壊してしまう可能性が高まります。これは、もっとも避けなければならないことといえます。
システム維持のために「計画的な」大規模修繕工事を
工事時期とその内容を特定するということは、修繕を総合的にわかりやすく整理して誰が担当しても間違いの起こらないようにするシステムそのものといえます。そして、このシステムを維持するためには、定期的な大規模修繕工事が必要になってくるのです。
理事が代替わりを繰り返そうと、その時点での理事にとって分かりやすく、できるだけ単純でシンプルな保全システムを継続することが大切です。それにより、結果として継続性のある優れた改修が実現し、経済的な合理性にも合致したものとなる場合がほとんどなのです。
ですから管理組合は、10~20年という単位で見たときにトータルで優れた修繕計画を考えなければなりません。長期修繕計画とはそのまとめにほかならないのです。修繕をシステム技術として捉えれば、それが可能になります。いい加減な長期修繕計画しかないマンションは、どうしても場当たり的な修繕工事を繰り返してしまい、長期的に見ると多くの無駄を生んでいます。
その点からも、誰にとっても理解しやすい修繕計画を立て、それを次の世代の理事へと伝えていくことが、理事会と理事にとって重要なことといえるのです。