ハワイ不動産の売却・・・所有権の移転に必要な書類とは?

前回は、売買契約の成立後、引渡しまでの流れについて解説しました。今回は、売主から買主への所有権の移転に必要な書類について見ていきます。

取引を確実に遂行するための第三者機関「エスクロー」

前回に引き続き、売却物件の売買契約の成立後、引渡までの必要手続きの中で、「②エスクローが指定した所有権移転登記必要書類の手続き」について見ていきましょう。


エスクローから要求される必要書類の流れを、個人名義の場合と法人名義の場合とで比較しながら見ていきます。前回お伝えした通り、エスクローは不動産取引を安全に、確実に遂行するための第三者機関となります。買主からは所有後の名義を確定させる書類を要求し、売主に代わって不動産売買代金を受領します。売主からは所有権を移転するために必要な書類を受領し、また売却に伴い米国ならびにハワイ州で規定されている源泉徴収税の徴収に関しても代行をすることで、法的にも税務的にも確実な取引を可能にしています。

 

そのエスクローですが、売主として準備・提供しなければならない書類には下記のものがあります。

 

 

[図表]エスクローに関する必要書類

 

ざっと上記がエスクロー関連書類となります(使用するエスクロー会社によっては必要書類に若干の差が生じます)。

 

上記図表から分かるように、個人名義よりも法人名義のほうが手配すべき書類が多くなるのが一般的です。当然、法人名義ですから、法人としての意思決定機関である取締役会で承認される必要があります。また、その決議をした人が取締役であるかどうかを判断するための謄本が必要となり、謄本の提出先はハワイのエスクローなので英訳が必要です。


謄本自体は、日本では公的書類として通用しますが、ハワイでは単体では効力がありません。そのため、ハワイ州の弁護士にその効力を証明してもらう必要があり、「Letter of Good Standing」という、弁護士の署名入りの「法人存続証明書」を作成してもらうことになります。そこまでやってはじめてその法人が不動産の所有者であり、売却する意思決定をしたものと認められるわけです。

売却価格から5%徴収するハワイ州源泉税「HARPTA」

また、ハワイ不動産の売却時には注意が必要な点があります。


それは、米国から見た「外国人」が不動産の売主になる場合には、売却代金に対して15%を源泉徴収されるということです。これは「FIRPTA」という制度で、目的としては、外国人が米国不動産を売却して利益が出ているにも関わらず、その申告をしっかりと行わずに自国へ帰ってしまうことを防ぐための制度になります。米国側としても、その譲渡益に対する課税を外国まで徴収しにいくのは容易ではないため、譲渡益が出ているかどうかによらず、一旦売買代金の15%を徴収し、実税額を確定後に余剰金を返金する、という流れになりました。要は、税金の取りっぱぐれを防ぐための制度です。

 

また、同様の意味合いの制度として、ハワイ州にも「HARPTA」という制度があります。こちらは、上記「FIRPTA」と同様に、売買代金に対して5%の源泉徴収を行う制度です。ですので、結論は連邦源泉税とハワイ州源泉税を合わせると、売却価格に対して20%が一時的に留保されることになるため、売却時には注意が必要です。

 

なお、「HARPTA」に関しては、法人名義の場合は免除されることがあります。方法としては、当該法人をハワイ州のDCCA(Department of Commerce and Consumer Affairs)という商業消費者省にビジネス登録をしておくことで、ハワイ州の事業体と同様の扱いをしてくれるため、5%の源泉税が不要になります。その免除申請書類が法人名義の必要書類「⑧Form N-289」という書類です。

 

※個人名義の場合は対応のしようがないので、強制的に20%が留保されるとお考え下さい。

 

これらすべての書類をエスクローが作成し、売主側に手続きを求めてきますので、Seller Agentと共に手配を進めていきます。最終的に、上記必要書類の共通項目にある「6. Deed(譲渡証)」への署名は、購入時と同様にアメリカ大使館・領事館、もしくは東京/神奈川/大阪の公証人役場にて「公証」をしてもらう必要があります。もちろん、ハワイ現地でも公証の手続きは可能です。

 

 

そこまで手配が完了すると、売主としては、あとは売買契約書で合意した引渡日を待つのみとなります! 引渡日当日には、エスクローの担当者が登記に必要な書類を登記所に持ち込み、登記手続きを行います。それと同時に、エスクローが預かっていた売却代金から上記の源泉税・諸費用を差し引いた金額を、「Disbursement/Wiring Instruction(売却代金支払方法指示書)」に記載の方法で売主へ支払います。

 

これで、ハワイ不動産売却に関する一連の手続きが一旦終了となり、売却完了となります!

 

次回は、引渡完了後にエスクローより提供される「Final Seller Statement(売主最終計算書)」を見ながら、売却時に発生するコストについて詳細を見ていきます。

株式会社Crossover International 代表取締役

仙台第一高等学校、法政大学経済学部経済学科卒業。宅地建物取引士。
2002年より某大手ディベロッパーにて一棟物件、区分所有物件の事業用不動産の販売を手掛け、2005年より中古不動産のバリューアップに特化した不動産会社の創業・ブランディング構築に携わる。2008年より株式会社Seven Signatures Internationalにおいて、主に米国ハワイのホテルレジデンス・ラグジュアリーコンドミニアムプロジェクトの日本の超富裕層マーケティングのセールディレクターに就任。2017年に株式会社Crossover Internationalを設立。

WEBサイト http://www.crossover-international.com/

著者紹介

連載田村仁のホノルル不動産通信

本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は著者の個人的な見解を示したものであり、著者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

 

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