前回は、町の不動産屋が「建築図面・見積書」から何を読み取っているのかを説明しました。今回は、同業者との差別化を図る、不動産会社による顧客サービスの例を見ていきます。

ハウスメーカに「ベテランの現場監督」の手配を要請

建築に関してもうひとつ大切なことは、現場監督の腕です。現場監督がしっかりしていれば、どこのハウスメーカーを使ったとしても立派な家を建てることができます。若くて経験も浅そうな現場監督なら、かなり不安になります。

 

そこで、私たちがハウスメーカーと交渉に入るときには、経験を積んでいる現場監督を手配してくれることを要望として先方に出します。そこで「経験20年のベテラン監督を手配しました」という回答があれば、「その方は今どこで施工していますか」と場所を尋ね、現場を抜き打ちでチェックしに行きます。前もって日時を告げると、そのときだけ用意しているかもしれませんので、それを避けるためです。見に行った現場がきれいで作業員もしっかりと働いているようであれば、優秀な監督だと判断します。

 

こんなところは、普通の不動産屋なら立ち入る必要のないところですし、業務として何か収益が直接生まれるわけではないので無駄なことなのかもしれません。しかし、一世一代の勝負に出たお客様にとってはとても重要なことで、ここで失敗して後悔させるわけにはいかないのです。我が社にはたまたま私を含めた何人かにその知識があるもので、それを利用しているだけですが、お客様にとっては大きなサービスだと受け止めていただけるのではないでしょうか。また、実際に現場を見ることで、最近の新しい施工方法やトレンドを知ることができ、勉強にもなります。

土地だけでなく「上モノ」まで面倒を見る不動産屋に

こうやってハウスメーカーとやり取りをしていると、今度は先方から連絡が入ることもあります。

 

一軒家を持とうと思って住宅展示場に来るお客様のうちおよそ7割は、土地を持っていません。つまり、家と同時に土地の売買も必要になるのです。すると、同時に土地探しもしなければならないわけですが、私たちと顔見知りになっている営業マンの方だと、もし大井町方面に家がほしいという要望があるときには、私の会社を優先的に紹介していただけます。

 

そんなこともあって、大井町周辺には馬込展示場、蒲田展示場、そしてちょっと離れますが世田谷展示場、駒沢展示場などがありますので、これらの展示場には手土産を持って半年に一回ぐらい定期的に挨拶に行き、ヒアリングや情報交換を行っています。

 

このように、土地だけでなく上モノまで面倒を見てくれる不動産屋はそう多くはありません。しかし、お客様にとってはとてもメリットのあるサービスだと思っていますから、今後も継続していきます。こうした点も、ほかの不動産屋とは差別化されるポイントのひとつでしょう。

小さな不動産会社の一人勝ち戦略

小さな不動産会社の一人勝ち戦略

徳島 雅治

幻冬舎メディアコンサルティング

株式会社帝国データバンクの調べによると、2016年度の不動産代理・仲介業者の倒産は93件で前年度の75件を24.0%上回り、3年ぶりの増加となった。負債額別では負債5000万円未満の小規模倒産が68件を数え、全体の7割を超えている…

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