本連載では、新進気鋭の若手税理士である谷口孔陛氏が、減価償却をはじめとした、税務・会計の基礎を楽しく、分かりやすく解説します。

耐用年数2年で100%償却っておかしくない?

こんにちは。めがね税理士の谷口です。

 

以前、私個人が運営しているブログにて『固定資産を買うときの節税 ~え、ベンツを節税に使いたい? しかたないなあそんな君にはこの記事!~』という記事を書きました。

 

その中で、「中古を買って耐用年数2年になると、1年で100%費用にできるよ」と書いたのですが、「なんで耐用年数2年なのに1年で100%費用にできるの? 計算ができないの?」と思われる方は多いのではないかと思います。

 

今回はそんな疑問について、簡単に解説させていただきます。

 

この理屈を初めて聞いたときに私が抱いたのが、

 

「耐用年数2年ってことは、2年間かけて償却するということで、100%費用にしちゃったら耐用年数2年にならなくない?」

 

という疑問でした。

 

◆公認会計士の方にも聞かれる

 

私は独立前に勤務していた事務所で公認会計士の方と仕事をすることがあったため、会計や税務の取り扱いについて話をする機会がままあったのですが、

 

「耐用年数2年なのに100%償却ってなんで? ぜんぜん理論的じゃなくない?」

 

と聞かれました。

 

私は「税理士としてひとつ頼れるところを見せねば」と思い、胸を張ってはっきりとこう答えました。

 

「そうっすね」

 

また、こうも言ってやりました。

 

「ぜんぜん理論的じゃないっす」

 

◆なぜ定率法で中古だと100%償却できることがあるのか

 

なぜ「定率法・中古・耐用年数が2年」という条件が揃うと100%償却できるのか。

 

実際のところ、『図解でどこよりもわかりやすく! 定額法と定率法の違い』の記事でもう正解を書いているのですが、

 

定率法=定額法の率×2

 

で計算することになっているからです。

 

耐用年数2年だと、

 

●定額法の率:1÷2=0.5

●定率法の率:0.5×2=1

 

になるということですね。

 

(計算式にしてみると不毛なことしてますね)

 

これが耐用年数3年以上だったらこう、

 

 

このグラフのように段々減って耐用年数どおりにできるはずなんですが、

 

もう2年に関してはしゃーない

 

とあきらめたんじゃないかなーと私は勝手に思ってます。

 

(関係者の方、何かよんどころない事情があるようでしたら申し訳ありません)

減価償却方法の移り変わり

◆その前に250%定率法というものもあった

 

この「定率法」のことを、もっと正確に表現して「200%定率法」と呼ぶことがあります。

 

2018年に書く記事に古い償却方法を載せても、経営者の方には大して役に立たないだろうと思いあえて書きませんでしたが、

 

●旧定率法→250%定率法→200%定率法

 

というふうに、時間とともに税務上計算が変わってきています。

 

旧定率法(H19.3.31までに買ったもの)

 

いまからしたら「旧」なので旧定率法という名前なんですが、昔は買った金額の10%を残しておくことになっていました。

 

小学生でもわかるとうれしい減価償却費入門!』で、余談として1円だけ「備忘価額(びぼうかがく)」を残すという説明をしましたが、あれが1円よりももっと大きかったわけですね。

 

(「残存価額(ざんぞんかがく)」と言っていました)

 

その後、昭和39年の改正で買った金額の5%になり、いまでは1円になったわけです。

 

この10%や5%を残していたときの定率法のことを「旧定率法」といいます(平成19年3月31日までに買ったもの)。

 

250%定率法(H24.3.31までに買ったもの)

 

で、「平成19年4月1日以降に買ったものは1円だけ残すことにしようね」と決まったものの、最初は上の計算が2倍じゃなく2.5倍でした。

 

だから「250%定率法」などと今となっては言うわけですね。

 

ただこれ、今は知りませんが当時世界一だったらしく、「さすがに世界一じゃなくてもいいんじゃね?」ということでたった5年で打ち切りになり、今では2倍に収まっています。

 

(余談)定率法は日本がもっとも早かった!?

 

ここでの余談はつまり余談のなかの余談ということですが、定率法の採用は日本がもっとも早かったそうです。

 

へえ。

 

これは現在でいう定率法による償却方法であるが、この当時、定率法による減価償却については、世界的にみて、「英国及び英連邦のごとく伝統的に定率法を認めていた諸国の一部を除いては、定率法の採用は、わが国がもっとも早かった」のである。

出典:税務大学校論叢

 

◆定額法も変わっている

 

定率法だけじゃなく定額法も変わっていってまして、似たようなものですが、

 

●旧定額法→定額法

 

に変わっています(時期も同じ平成19年4月1日です)。

 

こちらは特に250%も200%もないので、最後に残す金額が「10%→5%→1円」と変わっていっただけです。

 

計算方法

 

ちなみに定率法は、基本的に割合(×率)が変わるだけで、旧だろうが250%だろうが200%だろうが計算方法自体は同じです。

 

旧の5%前後のときだけ少々変わっていますが、要は、

 

「一旦5%まで償却する」

「5%になったら5年かけて(÷5をして)1円にする」

 

という2つが基本的な考え方です。

 

ただ旧定額法だけ特殊で、

 

●定額法

 そのモノを買った金額÷耐用年数

定額法

 そのモノを買った金額×0.9÷耐用年数

 

という計算をして、5%まで推し進めることになります。

 

◆今後

 

図解でどこよりもわかりやすく!定額法と定率法の違い』にも書きましたように、2016年4月1日以降購入した建物附属設備と構築物は定額法でしか計算できないことになりました。

 

税務署サイドからしたら「法人税の税率下げてんだからほかのとこで少しでも取り返させてよね」ということのようです。

 

減価償却の制度ってこのようになかなか移り変わりの激しい制度なので、「一気に費用にするつもりだったのに計算方法変わってた!!」ということがないように最低限の注意は払っておきましょう。

 

[まとめ]

 

というわけで、

 

●耐用年数2年で100%償却っておかしくない?

 →しゃーない

●定率法の移り変わり

●定額法の移り変わり(と計算方法)

 

についてまとめました。

 

基本的には覚えておく必要のない知識ばかりですが、ある程度社歴のある会社さんだと、固定資産台帳を見て「うん? 減価償却の計算バラバラ?」と思うことがあるので、そのときは「まあいろいろ制度が変わってるんだな」と思っていただけましたら幸いでございます。

本連載は、合同会社MGNコンサルティングの代表社員であり、税理士の谷口 孔陛氏のブログを抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒https://www.kh-tax.com/

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