今回は、領収書がなくても「経費」を計上する方法を見ていきます。※本連載では、新進気鋭の若手税理士である谷口孔陛氏が、減価償却をはじめとした、税務・会計の基礎を楽しく、分かりやすく解説します。

漏れのない経費計上には「こまめな記録」が重要

こんにちは。めがね税理士の谷口です。

 

「節税するにはどうしたらいいの?」

 

とお客さまから聞かれることがありますが、王道中の王道は間違いなく漏れなく経費を計上することです。

 

逆にこれをやらずして「節税したい!」などと叫んでいても意味がありません。

 

一番重要な漏れなく経費を計上するコツはこまめに記録しておくことなのですが、それだけではなんなので、

 

●ワリカンで領収書がもらえなくても経費にできる!

●そもそも領収書がない支払いでも経費にできる!

●領収書をなくしてしまっても経費にできる!(でもなくさないでね!)

 

といった、「領収書がないときでも経費にできる方法」をまとめました!

領収証がなくても経費にする「メモ」の取り方

割り勘(ワリカン)で領収書がもらえなかったり、領収書をなくしてしまったりした場合、経費にすることを断念していませんか?

 

そんなあなたは要注意。領収書がなくても経費に落とすことはできます!

 

もちろん領収書があったほうが間違いなく信用度は高いので、あるに越したことはないのですが、領収書がないと経費にできないわけではないのです。

 

メモ用紙で構いませんので、次の4つをメモしておいてください。

 

●お店の名前

●お店を利用した年月日

●内容(「飲食代」とか、買ったものの内容とか)

●自分が支払った金額

 

というのが必須の事項です。

 

そのほか、

 

●一緒に行った人の名前

●領収書がない理由(割り勘だったためとか、なくしてしまったためとか)

 

も書いておくことをおすすめします。

 

ショップカードがもしあれば、もらっておいてそれにメモしてもよいですね。

メモを「領収書の代わり」にするときの注意点

このときの注意点として、まず、架空の金額を書くことは絶対にやめましょう。

 

これは脱税行為なので、処分が非常に重くなります。

 

それも含めた注意点は以下です。

 

●あくまで自分が支払った金額を書くこと

●仕事に関連した支払いであること

●あんまりにもこのメモが多いと、税務調査があった場合に疑われるので注意

●なくした場合はまず再発行できるかを確認したほうがより安全!

(あくまで領収書があることが基本であって、例外的な処理としてゆるされる、ぐらいに考えておきましょう。)

 

また、税理士さんによっては「出金伝票」というものにメモすることを勧めている方もいらっしゃいます。たしかに書く項目が示されているのでわかりやすいのですが、個人的にはいちいち買わないでもいいかなーという気がします。

 

●「なに書くんだっけ?」をいちいち思い出すぐらいなら出金伝票

●大体覚えていれば適当なメモ用紙で済ませる

 

という使い分けでもいいかもしれませんね。

もともと領収書が出ないものも「経費」にできる

そのほか、そもそも領収書がなくて当たり前なものもあります。

 

●交通費(電車代やバス代)

●冠婚葬祭(ご祝儀や、お香典)

●自動販売機

 

などですね。

 

これらも漏れたら非常にもったいないので、忘れずに計上しておきましょう!(書く項目は上記と一緒で大丈夫です)

 

冠婚葬祭は、多くの場合招待状やお知らせなどの通知がくるかと思いますので、金額をメモした紙と一緒にお知らせや当日もらった紙を取っておきましょう。

 

自動販売機は、「のどが渇いたから自分で飲んだ」という場合はもちろんだめですが、たとえば会議でみんなに配る飲み物を買ったり、そとで作業をしている社員に差し入れをしたり、という仕事に関係した支払いであれば大丈夫です。

 

社内の人だけに配ったのか、社外の人もいたのかで勘定科目が変わりますので、そちらも簡単にメモしておきましょう!

 

というのが、領収書がないときでも経費にするメモのしかたと注意点でした。

レシートはまずい? よくある3つの疑問

そのほか、少し余談に近いですが、よくある領収書の疑問も一緒に解決しておきましょう。

 

●レシートだとまずいの?

●宛名は空欄や上様だとまずいの?

●領収書と領収証、どっちが正しいの?

 

の3つです。

 

レシートだとまずいの?

 

「レシートだと経費にできないんだよね?」

「店員さんに必ず『領収書お願いします』って言わなきゃいけないんだよね?」

 

という質問をお受けすることは非常に多いです。

 

これ、勘違いされている方が非常に多いのですが、いわゆる手書きの領収書ではなく、レシートでまったく問題ありません。

 

むしろ最近のレシートは品物の名前まで記載されますので、「お品代」という領収書を別途書いてもらうより証拠能力は高いのです!

 

ちゃんとしたレシートがあるのに、わざわざ「領収書を書いてもらえますか」と店員さんにお願いする必要はありません!

 

この領収書文化は、レジがない時代、レジからレシートが出なかった時代の名残が残っているのでは、という気がします。

 

★レシートで済ませるときの注意点

 

ただ、時には領収書をもらったほうがいい場面もあります。領収書が必要な場面として、

 

レシートを出してもらえない場合

レシートはあるけど、お店の名前や日付が書いてない場合

 

には店員さんにお願いして領収書を出してもらったほうがよいです。

(古いレジをつかった飲食店だとときどきあります)

 

宛名が「上様」だとまずいの?

 

「宛名が空欄なんだけどまずい?」

「宛名が上様なんだけどまずい?」

 

これも時々聞かれるのですが、これはどういったお店(事業者)からもらったのかで変わります。

 

小売業(本屋、文房具屋、雑貨屋などなど一般の消費者も買えるお店)

飲食店

コインパーキングなど一時利用の駐車場

 

など、不特定多数の人相手の商売の場合、宛名はなくても問題ありません。

 

「上様」でも大丈夫というか、「上様」さえ必要ないということですね。

 

ただ、BtoBの商売、事業者相手の商売だと宛名が必要になることもあります(消費税を納めている方の場合)。

 

どちらにしろ「宛名があったほうがより信用度は高い」ということは間違いありません。

 

「領収書」と「領収証」の違い・・・どっちが正しいの?

 

「領収書と領収証はどっちが正しいの?」

 

という質問をいただいたこともあるのですが、結論から言うと領収書も領収証も正しいです。

 

領収書というのは「お金を受け取ったことを証明する書類」ということなので、「領収証」のほうが証明書感は出ますね。コクヨさんなど、販売されているものは「領収証」であることがほとんどです。

 

私の場合、法人税法施行規則という法律的なもので「領収書」と書いてあるのを見て以来、一応法律の仕事だし合わせとくか、という長いものには巻かれろ理論で「領収書」を使っています。

 

まとめ

 

というわけで、

 

割り勘で領収書がなくても経費にする方法

領収書をなくしてしまったときに経費にする方法

交通費、冠婚葬祭、自動販売機でも経費にできる!

領収書じゃなくレシートでも大丈夫!

買ったお店によっては宛名がなくても大丈夫!

「領収書」と「領収証」は同じ!

 

という内容についてまとめました。

 

なお、当記事は法人の経営者の方や個人事業主の方に向けておりますので、全般的に「税務署への対応として」問題ないかどうかを書いております。

 

サラリーマンの方が経費精算をする場合、社内規定(や経理の基準)で「レシートだとダメ」や「宛名がないとダメ」というところもあるようなので、混同しないようご注意を!

 

経費は「現金で支払った」「個人のクレジットカードで支払った」場合に漏れることが多く、きちんとした経費を支払ったのに経費にしなかった、というのは非常にもったいないことです。

 

節税の第一歩として、また正しい経営状況を把握するために、支払ったものはきちんと計上をして、漏れがないようにしましょう!

 

本連載は、合同会社MGNコンサルティングの代表社員であり、税理士の谷口 孔陛氏のブログを抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒https://www.kh-tax.com/

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