ウソをつく人には共通点(ウソのサイン)がある
◆ウソのサインは「話し方」と「仕草」に表れる
私は23歳で巡査部長に昇任し、すぐに刑事になりました。昇任して異動した先の副署長がたまたま本部の知能犯担当の元幹部だったので、「やる気があるなら」と本部に推薦してくれたのです。
刑事になりたかったので嬉しかったのですが、警察署の刑事課はベテランばかり。はじめての刑事でしたし、年齢が若かったのでかなりビビったのを覚えています。
この警察署では刑事の人数が少なかったため、知能犯罪だけでなく、多種多様な事件の犯人や容疑者を取調べる機会が多くありました。
前科20犯の粗暴犯、暴力団の幹部、常習の下着泥棒、痴漢をした銀行員、万引き少年など、罪名、年齢、性別、職業もさまざまです。当然ですが、犯罪者の中には自分の罪を認めなかったり、認めても罪を軽くしたいためにウソを言う者がたくさんいました。
しかし私は当初、相手のウソを見抜くことができなかったのです。悩んだ私は、休日になると図書館へ行ってウソに関する本を読み漁りました。また、先輩の取調べに立ち合わせてもらい、背後で様子を観察しました。さらに、行動原理を探るために、電車に乗ったときや買い物に行ったときなどは、人間観察をし続けました。今考えれば、かなり怪しい人だったかもしれません。
そして数年経ったある日、ウソをつく人には共通点があることを見つけたのです。私はそれを「ウソのサイン」と呼んでいます。
「顔を触る」万引きの常習者!?
「ウソのサイン」は突然表れるのではなく、「刺激」によって表れます。つまり会話中の「質問」が「刺激」となり、相手の「話し方」や「仕草」に表れることがわかったのです。
最初に気づいたのは「逆ギレ」という「話し方のウソのサイン」でした。特に暴力団や粗暴犯にその傾向は強く、彼らは自分の立場が悪くなると必ずといっていいほど逆ギレして怒り出すのです。
「ふざけるな、若造の癖に! 偉そうなこと言ってんじゃねーぞ!」など罵声を浴びることがよくありました。
「逆ギレ」は自分のウソが見破られそうになったり、答えに窮すると相手を威圧して追及の手を緩めさせる目的で行われます。
次に「仕草のウソのサイン」があることがわかりました。このサインは姿勢、身振り手振りなどの非言語コミュニケーションに表れました。
万引きの常習者の取調べをしていたときのことです。会話をしながら手の動きに注目していると、私の「質問」のあとに左手で「顔を触る」のです。それも家族の話やどうでもいいプライべートの話では手は動きません。犯罪に関わる質問をするとなぜか手が持ち上がり、顔を触ります。これを発見したときは、思わず笑いそうになったことを覚えています。
「人間にはウソのサインがある」
それからは日々の取調べや事情聴取で研究を重ねました。