家宅捜索時、家人がしきりに天井を見ていて・・・
「目は心の窓」と言いますよね。人間の心理は目の動きで読むことができますし、その人が今どんなことに興味を持っているかということもわかります。当然ながら、私も刑事時代は対象者の目を見て心理を読んでいました。
例えば家宅捜索。通称「ガサ入れ」と呼びますが、私も責任者として行くことがありました。家宅捜索は、裁判所から出た捜索差押令状を立会人(家人)に示してから捜索がはじまります。
責任者の私は何をするかというと、立会人と雑談をはじめます。「ここは何人で住んでいるの?」「たまには誰かくるの?」と質問しながら、立会人の目の動きに注目するのですね。
あるとき、立会人と会話をしていると立会人の目がなぜか天井をちらちら見ていることに気づきました。「天井裏に何かあるかも」と直感で感じた私は、捜査員に「天井裏をよく見てくれ」と指示したところ、案の定、禁制品が出てきて逮捕したという事案がありました。
私は国税の査察官、通称マルサにも知人がいるので同様の話を聞いたことがあります。その知人がある社長の自宅に捜索に入ったときのこと。
社長を目の前に話を聞きはじめると、なぜか落ち着きがない。会話をしながら社長の目を注視していると、窓の外の庭をちらちらと見ている。「もしかしたら庭に何かあるのかも?」と直感が働き、そのあと、庭の池の脇を掘り起こしたところ、脱税していた現金の束が発見されたそうです。人間の心理として隠匿場所を無意識に示してしまうといういい例です。
また「スリ眼」って聞いたことがありますか?
実はスリには特有の目の飛ばし方があります。通常、買い物客の視線の先には何があるでしょうか? それは「商品」です。これは当然ですよね。
ところがスリが興味のあるものは、お客様の「カバン」です。ですから買い物客の中からスリ特有の目の飛ばし方である「スリ眼」を見つけてスリを捕まえるのです。
これは「痴漢」にも言えます。通勤ラッシュ時、通常の通勤客と明らかに違う目の飛ばし方をしている男がいます。駅のホームにいる女性の足ばかり見ている男がいたら、それは痴漢や盗撮犯に間違いないわけです。
実は刑事はいろんな場所に紛れ込み、目の動きで犯罪者を見つけているんですね。
このように目の動きを見ていると、相手が何を考えているかその心理を読むこともできます。特に悪事を働いている者は周囲と明らかに違う目の動きになるので、それを見て心理を読むことになります。
上半身の角度は「興味の角度」!?
上肢、つまり姿勢も何かを物語っています。上半身の角度は「興味の角度」とも言われます。つまり人間は興味があればあるほど前のめりになり、興味がなければ後方に倒れていきます。つまり、そこで相手の心理を読むことができます。
刑事時代、取調べをしていて犯人の姿勢にも注目しました。
ウソをついているときは背もたれに深く座り、首を横に振ったり、質問に対しても無反応であることが多いのです。
ところが「それは違います」と真実を述べたいときや、「ここは弁解したい」と必死に説明するときは前のめりになることがありました。自分に興味のある話であれば、前のめりになるのが自然な人間の仕草なのです。
また上半身の揺れは感情の揺れでもあります。会話をしていて縦に揺れる場合は相手の話を承認して頷きながら聞いているケースが多いのですが、横に揺れ出す場合には否定的な感情を持っています。体で「NO」と示しているのです。
話をしていて相手の上半身が斜に向いている場合、つまり正対していない場合も拒絶したいとか、不満や疑問を持っているケースです。いわゆる「斜に構える」という状態ですね。
あなたも嫌いな人や苦手な人の前だと斜に構えて話すことがあると思います。上半身の姿勢も心理を物語るのです。