今回は、米国債投資における「利回り」の仕組みを見ていきます。※本連載では、株式会社ゴールドハーツ代表・ファイナンシャルプランナーの杉山暢達氏の著書、『証券会社がひた隠す米国債投資法』(ベストセラーズ)より一部を抜粋し、米国債投資の具体的な方法について解説していきます。

米国債が「購入時に利回りが確定する」理由

すでに述べているように、米国債は購入時に利回りが確定します。正確には、購入時に利金分を差し引いた価格で購入できるため、事前にいくらもらえるか(償還金額)、そしていくらの利益が出るか(償還金額-購入価格)が明らかになります。

 

株や投資信託、あるいは為替取引(FXなど)であれば、購入時に売却後の価格が明らかになることはありません。その後の価格変化をチェックして、売却に適した時期を探る必要があります。それだけ労力と時間をかけなければならないのです。

 

投資に慣れている人ならそれでもいいのですが、普段からあまり投資に馴染みがない人の場合、そのための負担は重荷となってしまいます。そうであれば、事前に売却時の価格が分かってしまう方が投資しやすいでしょう。

 

たとえば、米国ゼロクーポン債を野村證券の窓口で購入する場合を考えてみましょう。28年4カ月物の米国ゼロクーポン債は、購入単価が「45.52」となっています(2017年10月時点)。つまり額面金額を1万ドルにしたい場合、4552ドルで購入できるということです。

 

これが割引債と呼ばれる所以です。額面金額、要するに28年4カ月後にもらえる金額は1万ドルですが、購入時は「1万ドル×45.52%=4552ドル」で買えてしまう。それだけ事前に割引されて(利金分が差し引かれて)、販売しているということです。

 

ちなみに、この場合の利回りを計算すると、「2.790%」となります。安全に運用できて、かつドルベースで3%近くの利回りが購入時に確定しています。理論上為替リスクはあるものの、これだけ分かりやすく、しかも安心して購入できる金融商品は、他にはありません。

米国債の「利回り」はどう決まるのか?

30年後にもらえる金額が確定しているということは、購入時に、リターンがフィックスしているということです。投資経験がある方にとって、このインパクトはかなり大きいものだと思います。

 

ところで、米国債の利回りはどのようにして決まるのでしょうか。実は、米国債は絶えず市場で取引されており、その利回りは常に変化しています。したがって具体的には、償還日ごとに購入単価と利回りが決まります。

 

例えば、野村證券で1万ドルの米国ゼロクーポン債を購入した場合について考えてみましょう。下表をご覧ください。

 

[図表]残存期間別利回り

 

残存とは、償還日までの期間を意味しています。「28年4カ月」であれば、28年4カ月後に償還日を迎えることになります。つまり28年4カ月後に投資したお金が返ってくるということです。

 

次に、購入単価を見てください。28年4カ月物の購入単価は「45.52」となっています。これは額面金額100%に対して45.52%と解釈できます。よって今回、1万ドルの米国ゼロクーポン債を購入すると仮定するため、

 

1万ドル(額面金額)×45.52(購入単価%)=4552ドル

 

この4552ドルが、購入時に支払う金額です。現在4552ドルで購入した米国ゼロクーポン債は、28年4カ月後に1万ドルで償還されます。その金利が「2.790%」というわけです。

 

金利が変動することによって、これらの数値も少しずつ変わっていきます。大切なことは、購入するタイミングよりも、むしろ、いつから始めるかです。老後のことを考えると、できるだけ早くスタートした方が有利です。期間が短ければそれだけ得られる利回りも少なくなってしまいます。

本連載は、杉山暢達氏の著書『証券会社がひた隠す米国債投資法』(ベストセラーズ)から一部を抜粋したものです。掲載している情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。投資はご自分の判断で行ってください。本連載を利用したことによるいかなる損害などについても、著者、出版社および幻冬舎グループはその責を負いません。

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