賃貸物件を「満室」に近づけるには、部屋探しから入居、退去まで、常に入居者目線の経営を行っていく必要があります。本連載は、満室経営株式会社 代表取締役・尾嶋健信氏の著書『不動産投資は空室物件を満室にして超高値で売りなさい』(ぱる出版)より一部を抜粋し、「満室ライフサイクルチャート」を活用した空室ゼロの賃貸経営の進め方を紹介します。

「満室ライフサイクルチャート」とは?

「満室経営」に限りなく近づけるには、部屋探しから入居、退去(卒業)まで、常に入 居者の立場に立ち、入居者目線の経営を行っていく必要があります。これを私は「満室ラ
イフサイクル」と呼んでいます(図表)。

 

満室ライフサイクルをもう少し具体的にいえば、入居者が「入居から退去(卒業)するまでの動き」です。部屋探しから始まり、物件を見て、入居の審査があり、そして契約を経て入居です。

 

そこから先は、毎月家賃を払って小修繕等を対応して、2年に1度は普通借家契約であれば、更新、定期借家契約であれば、再契約する必要があります。

 

こうして長く住んでいただきますが、やはり退去の時はやってきます。退去時には敷金精算があります。入居者が、物件に住み始めてから引っ越しをするまでの一生。これが入居者の満室ライフサイクルなのです。

 

入居者のライフサイクルから考えた「満室経営」を考えると、5つのカテゴリーに別れます。このカテゴリーは不動産管理会社の管理面の枠の中にあるカテゴリーとほぼ同じです。

 

入居者の入居から退去(卒業)までの賃貸借期間を、入居者のライフサイクルと考えた
場合、このような流れで、満室経営を捉えていく必要があります。

 

これは入居者審査、更には退去時にトラブルにならないことを見据えた賃貸借契約まで
の一連の流れ、これが「契約」です。そこから、「家賃管理」、毎月の家賃の支払いです。「クレーム対応」、日々のクレームに対応します。そして「更新」です。もしくは定期借家契約であれば再契約です。最後に「退去」です。私は「退去」のことを「卒業」と呼んでいます。これらの5つの要素を落とし込むことが、「ライフサイクル」になるのです。

 

【図表】

満室ライフサイクル
満室ライフサイクル

「性悪説」に立つ必要がある入居審査

ここから、満室ライフサイクルチャートについて、1つ1つお話しをしてい
きたいと思います。まずは「契約」からです。

 

入居希望者から入居申し込みがあれば喜ばしいですが、ここでちょっと考えてください。
多くの不動産投資家さんが「とにかく入れて満室に!」と焦る傾向にあります。その気持
ちはよく理解できますが、極めて慎重に対応することが大切です。

 

このようなとき、仲介業者に悪意はないにせよ、入居者を吟味せず無理矢理に入居を決
めるということがあるからです。その結果、家賃滞納を引き起こしたり、騒音やゴミ捨て
の問題でまわりに迷惑をかける……そういった不良入居者である確率が高まります。

 

ここでお伝えしたいのは、はじめての賃貸借契約における入居審査の重要性です。よく
「不動産投資は出口戦略が重要」と言われますが、賃貸経営においては「入口対策」こそ
が重要だと考えています。入居審査をしっかり行い、家賃滞納や不良入居者の入居を未然に防ぎます。この入口対策ができていないと入居後のリスクが高まります。

 

しかし、人口が減って内見者数も減っている中で、審査基準を高くし過ぎては、入居が
決まらないのも事実です。そういう意味では、審査のハードルを下げて、入居を募らなけ
ればならないこともあります。その場合、限りなくリスクを細分化して、入居させる必要があります。たとえば定期借家契約を有効に使うこと。更に、入居審査を管理会社依存型ではなくて、大家さん自らが5~10分かけてチェックを行うのは、今後ますます重要になっていくと考えます。

 

入居審査をするにあたって焦りは禁物です。また「何とかなるだろう」という性善説を
やめましょう。賃貸経営を行う上で、ポジティブシンキングはとても大切ですが、入居審
査にあたっては安易に「この人はいい人だろう」と判断してはいけません。どちらかとい
えば、「申込書の記載内容は正しいだろうか?」という、性悪説に立つ必要があります。

 

また一般媒介で仲介業者から直接に申込みをもらうにしても、管理会社を通して申込み
をもらうにしても、「物件を止める(入居募集をストップさせる)のは、管理会社でなく
て大家さんである」ということをしっかりと話をします。

入居希望者の「文字」を見れば本気度、性格が分かる⁉

ここで大事なのは、不動産業者から電話だけの口頭レベルの入居申込は、受け付けない
ことです。よく電話がかかってきて口頭で説明を受けて、入居を受け入れてしまう場合が
ありますが、ここはいろいろなリスクがありますので、必ず何らかの形で書面をもらうべ
きです。

 

あくまでも書面ベースの確認をもって「物件止め」します。具体的には自宅へファック
スで送ってもらう、自宅へメールにPDFファイルを添付して送ってもらう、もしくは郵
送してもらう、もしくは近くに住んでいれば届けてもらうなど、いろいろな形で紙媒体を
受けとりましょう。その上で、自分で申込書のチェックを行って、はじめて物件止めをし
ます。

 

書面審査で何がわかるかといえば、まず文字です。文字は人を表すとよく言いますが(私
も人のことは言えませんけれども)、それと同時に、その文字を読むことで物件に対する
申込みの本気度、更には入居者の性格というものが見てとれます。属性、性格の判断材料
となり、入居後のトラブルリスクの判断材料にもなります。きちんと丁寧に住所を書く人、更には住所が2~3回も書くところがあれば汚い字で「同上」と書く人、どちらの本気度が高いと思いますか?

 

字が丁寧な人は本気で物件を決める可能性が高いですし、しっかりした方だと思います。
字が乱雑で空白だらけの人は、性格が大雑把かもしれません。入居者の属性がいかに良く
ても、性格は人それぞれなので、入居希望者自らが書いた入居申込書を、大家さんが自分
の目でしっかり確認することが大切です。

 

中にはきちんとしていても、度が過ぎてしまっているようなケースもあります。その場
合は、神経質すぎる入居者で入居した後に、「道路の音がうるさい、隣の音がする」とい
ったクレーマーとなる可能性もあります。

 

そのため入居説明のときに「この物件は鉄筋コンクリート造りですが、投資用に建てら
れた物件ですから、壁1枚で隔たれたお隣から音がする、外の音が入ってくる可能性があ
ります」ということを、契約時に伝えるべきか検討します。

 

逆にすごく大雑把な字体で空白も多いという人は、入居後の家賃支払い、ゴミ出しルー
ルなどがルーズになる可能性を秘めています。

 

ですから、その点をしっかりと伝えなければなりません。入居説明では、そういうとこ
ろも重点をおいて伝える必要があります。このような形で入居申込書から、どういう入居
者さんの性格なのかを読み取ることが必要です。

 

次に入居審査のポイントとなるのは以下の3点です。

・今、どこに住んでいるのか?

・なぜ引越しをするのか?

・勤務先はどこなのか?

 

なぜ、引越し理由を再確認するのでしょうか?

 

これは管理会社が入居審査する上で、更には賃貸営業マンが客付をする上で、よく把握されていないまま部屋探しをしており、審査を通しているケースがあります。というのは本来、引越しの理由がなくても部屋選びができますし、入居審査ができるからです。

 

たとえば、滞納保証会社や入居申込書の中に、更新が引っ越し理由だった場合、更新と
いう欄に○がしてあったとしても、「なぜ更新をするにあたって、引っ越しをするのか?」という理由を聞きましょう。

 

そうしないとトラブルに遭う場合があります。とくに近い住所から近い住所へ引っ越す
場合、これは不良入居者であるかもしれません。

 

このように、入居後のトラブルを予見するためにも、引越し理由の確認をすることは必
要です。その他、本人確認、在籍確認、就業確認を管理会社の基準に則って確認します。

不動産投資は空室物件を満室にして超高値で売りなさい

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尾嶋 健信

ぱる出版

私は、日ごろより、コンサルティングや塾を通して、不変的なノウハウを言い続けています。空室対策や満室経営の根本は変わりませんが、その間、様々な新しいノウハウやツールが出てきました。 本書はそれらを加えたうえで、空…

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