今回は、法的に有効な遺言書作成のルールを解説します。※本連載は、認定司法書士、行政書士、民事信託士として活躍する渡邉善忠氏の著書、『最強の遺言 相続・遺言まるわかりセミナー』(キーステージ21)から一部を抜粋し、「遺言書」や生前の財産管理について、わかりやすく解説します

「自筆の遺言書」は手軽だが、作成には注意が必要

今時は、パソコンやワープロで文章を作成する方も多いと思いますが、現時点(平成30年1月)では、それは遺言書としては認められていません(最後に自筆のサイン・署名があっても、です)。「現時点」と申しましたのは、今後は法律が改正される可能性も十分にあるということ。

 

もちろん、法律が改正されたとしても、自筆の遺言書が無効になることはないので、すべて手書きでも全く問題ありません。ただし、法律的に有効な遺言書を用意する際にはルールがありますので、それにのっとった書き方・残し方をする必要があります。

 

書籍『最強の遺言 相続・遺言まるわかりセミナー』第1章でもご紹介したように、自筆の遺言書をつくるには、4つのルールがあります。

 

●最初から最後まで全て自筆で書く

●日付を書く(○年○月○日まではっきりと書く)

●名前を書く(本名をフルネームで書く)

●印鑑を押す(可能であれば実印。認め印でも可。)

 

加えて自筆の遺言書では、その保管方法にも気をつけておきたいということもお伝えしました。遺言を書いたことを誰にも伝えていなければ、死後、遺言書が発見されないということも十分にあります。また誰かが意図的に破棄することも、盗難や火事などで消失する可能性もゼロではありません。

 

また意外に多いのが、相続人の誰かが「これは本人の字と違うのではないか?」と言い出すことです。その際には、筆跡鑑定を行うことになり、時間も費用もかかります。さらに自筆の遺言書を開封する際には、裁判所による「検認」手続きを経て開封しなければなりません。

 

自筆の遺言書には、自分一人で気軽に作成できるというメリットがある反面、その後の手続きに多少の手間がかかるなど、様々なリスクやデメリットもあります。

費用と手間はかかるが「公正証書遺言」は安心・安全

その一方で、公証役場で作成してもらう遺言書については、最初の手間と費用がかかる反面、自筆証書遺言のようなリスクはまったくないといえます。

 

公正証書遺言を作成する際には、二名の証人の立会いが必要になりますが、相続人は証人になることができません。オススメとしては、友人や以前の職場の同僚などのまったくの他人。もし誰もお願いするような人がいない場合は、弁護士や司法書士などの専門家、公証役場に相談することもできます。

 

◆公正証書遺言の作成に必要なもの

 

●遺言の草案

●遺言者の身分証明書(運転免許証や印鑑証明書など)

●遺言者と相続人との続柄がわかる戸籍謄本(相続人以外の人に遺贈する場合は、その人の住民票)

●不動産の登記事項証明書と固定資産評価証明書

●実印

●作成手数料

 

それでも、「いきなり公証人役場に行くのは抵抗がある」「将来は書き換える可能性もある」という方もいると思います。そういう方は、まずは手書きで遺言の下書きをつくっておくことから始めてみてください。これは正式な遺言ではないので、効力もない代わりに、何度でも気軽に書き換えることができます。もちろん、パソコンでつくっても構いません。メモ書き程度に残しておいて、「よし、これでいこう!」という時がきたら、その下書きをもとに公正証書遺言に書き換えてもらう。

 

遺言書を作成しておけば、あとは心置きなく残された時間を自分の自由に使うことができるようになるというもの。

 

遺言書をつくることは、残された人の不要な争いを防ぐとともに、家族と自分自身の残された時間を、大切に過ごすための効果があります。

本連載は、2018年3月1日刊行の書籍『最強の遺言 相続・遺言まるわかりセミナー』(キーステージ21)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

最強の遺言 相続・遺言まるわかりセミナー

最強の遺言 相続・遺言まるわかりセミナー

渡邉 善忠

キーステージ21

「相続において、遺言は最強です!」 司法書士の著者が、具体的な事例を通してトラブル対策や相続の基本のキをお教えします。 将来トラブルにならないために用意できる「最強の遺言」とは何か? 残りの人生を明るく生きるた…

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