「特定の部位の症状」だと思い込まないほうがいい
耳鼻咽喉科の医師である私が、「めまい・耳鳴りの専門」を標榜していることは、すでに申し上げたとおりです。しかし、このように原因を見てきたうえであらためて考えると、めまい・耳鳴りという症状には、ほかのさまざまな診療科目も関係していそうだと、お察しになったのではないかと思います。
皆さんなら、めまい・耳鳴りを、何科の病院で診てもらうでしょうか。耳鼻科やめまい専門外来に行きますか。脳神経外科、あるいは神経内科でしょうか。それとも、眼科や婦人科、心療内科などで、ほかの病気に関連した症状として診てもらっているでしょうか。
私自身は、どんな診療科目を選ぶかにかかわらず、めまい・耳鳴りを特定の部位の症状だと思い込まないほうがよいと考えています。また、どこの病院に行っても無意味ということはありません。
脳血管のトラブルが見つかり、命拾いしたケースも
めまいが起こったとき、「もしかして脳梗塞ではないか」と心配すれば、脳神経外科に行くのではないかと思います。そして、脳神経外科で調べてもらったたいていの患者さんは、「脳はなんともないから耳鼻科に行ってごらんなさい」と言われます。
しかし、本人の不安を取り除くという意味で、脳神経外科の診断を受けるのはよいことだと思います。ありふれためまいだと思っていたら脳血管のトラブルだったという場合もあり得ますから、脳を診てもらって命拾いすることもあるわけです。
もしも脳梗塞が見つかったら早期診断となってそれだけ治療しやすいし、脳梗塞が見つからなかった場合はそのぶん安心できるということです。
めまい・耳鳴りを訴えてまっすぐ耳鼻科にいらっしゃった患者さんも、年配の方だとまず小脳梗塞を疑い、あるいは脳腫瘍の一種である聴神経腫瘍などのリスクも考慮して診断をしています。