根治をあきらめ、薬で対処している人が多い「片頭痛」
脳の血管に原因があり、めまいや耳鳴りを伴う病気には、慢性頭痛の一種である片頭痛もあります。
片頭痛は、特に自己診断に頼って―というよりは根本的に治すことをあきらめて、薬で対処している人が多い病気だと思われます。長年、薬を飲み続けてきた頭痛持ちの患者さんには、痛みがつらいので薬の量が増え、めまいや耳鳴りがひどくなったので耳鼻科にいらっしゃるということがよくあります。
片頭痛の発作時には、ズキズキと脈を打つような激しい痛みがあり、動くのもつらくなります。そして、光や音、においなどに敏感になり、吐き気がしたり実際に吐いてしまう場合も少なくありません。
薬が効かない片頭痛がある場合は専門医に相談を
それだけつらい症状ですが、かつてはしっかり治せる治療法が確立していなかったので、「自分は頭痛持ちだから」と、皆さん我慢してつきあってこられたのです。
当院にめまい・耳鳴りを訴えて来られる患者さんたちも、ご本人は、めまい・耳鳴りと頭痛が結びついているとは思っていない場合が多く、私が問診して初めて「実は片頭痛だった」と知ることになります。
ですが、この片頭痛も、めまいや耳鳴りと密接に関わっている病気なのです。片頭痛は女性に多く、比較的若い年代の患者さんだと、めまい・耳鳴りの陰に「現役の片頭痛」が隠れています。そして、ご年配の患者さんだと、「昔、片頭痛に悩まされていて、最近それは治まったけれども、めまい・耳鳴りがする」とおっしゃる方が多いのが特徴です。
片頭痛の発作は、脳の血管が広がって炎症を起こすことで起こると考えられています。血管が拡張する原因ははっきりしていませんが、片頭痛は圧倒的に女性に多いことから、女性ホルモンの影響があることはほぼ疑いありません。
片頭痛の発作には、視界にチカチカする光が現れる閃輝暗点(せんきあんてん)のような特徴的な前兆を伴うものがあります。最近は、その前兆を感じた際に服用し、発作のつらさを和らげる薬が使われるようになりました。
この片頭痛は最近注目されているテーマなので、本書の中でも取り上げています。片頭痛があって頭痛薬、鎮痛薬を常用している方、特に薬が効かなくてつらいという方は、専門の医師にぜひ相談してください。今では、そのつらい症状を治す方法が確立し、徐々に広まっています。