聴覚をつかさどる「蝸牛」
まず聴覚のほうから説明しましょう。
[図表]耳の働き
内耳の前側の奥を見ると下のほうに「蝸牛(かぎゅう)」という器官があります。この蝸牛という名前は文字どおり「かたつむり」を意味していますが、まさにそういう形に見えると思います。
中耳の耳小骨が増幅した振動は、この蝸牛に伝わります。蝸牛の中はリンパ液(体液)で満たされていて、音の振動がリンパ液を揺らすと、その揺れを電気信号に変換して「蝸牛神経」に送り出すしくみになっています。脳は、その電気信号から音の情報を受け取るのです。
蝸牛の中で電気信号を作っている感覚細胞を「有毛細胞」といいますが、この細胞は、蝸牛内のどこにあるかによって担当する音の高さ(周波数)が異なります。
平衡感覚をつかさどる「三半規管」
次に平衡感覚です。平衡感覚をつかさどる器官といえば、「三半規管」の名前に思い当たる人もいらっしゃると思います。その場所は、内耳の後ろ寄りでやや外側、図表で見ると蝸牛よりも上にあって、「前庭」という部位をはさんで蝸牛とつながっています。
三半規管というのは、半円形をした3つの半規管(前半規管、後半規管、外側半規管)の総称です。3つの半規管は、それぞれ90度ぐらいずつ傾いています。この絶妙な構造によって、縦・横・前後の回転を総合的に感じ取れるようになっているのです。
内耳の構造は一見ぐにゃぐにゃと入り組んでいるので「迷路」という別名もあるほどですが、よく見るとそれだけ精巧な作りをしているのです。
半規管は、骨(骨半規管)と膜(膜半規管)の二重構造になっていて、中はリンパ液で満たされています。そして、前庭につながっているつけ根の部分で、有毛細胞がリンパ液の揺れを電気信号に変換し、前庭神経に送り出すのです。
また、前庭の中には、2つの耳石器(卵形嚢、球形嚢)があります。耳石器は、直線的な動きや重力が加わると、その刺激を電気信号に変えて前庭神経に送り出します。