耳鳴りは、年齢を重ねるほど起こりやすい症状
次は、耳様々な鳴りについてです。めまいと耳鳴りは、併発することも、それぞれ単独で起こることもあります。めまいと耳鳴りで比較すると、めまいが若い世代にも多い症状、耳鳴りは年齢を重ねるほど起こりやすい症状だといえます。
そして、耳鳴りにもいろいろなタイプがあります。まず、誰にでも聞こえる異常ではない耳鳴りがあります。夜間や静かなところで感じる「シーン」という音です。これもやはり耳鳴りではあるのですが、ふだんはほかの音にまぎれて意識していない音が、静寂によって耳にとまるだけのことです。病気かと心配する必要はありません。
私たちの聴覚には、聞く音を選ぶという能力が備わっています。人ごみの中でおしゃべりしながら歩くときをイメージしてもらえばわかりますが、たくさんの音が耳から入ってきても、必要な音を選んで聞いているのです。そこで、聞くべき音がない静かなところでは、自分の耳の中でいつも反響している音に、あらためて気づくことがあるわけです。
病気として扱うべき耳鳴りの「区分」とは?
病気として扱うべき耳鳴りは、主に次のように区分されます。
①自覚的耳鳴りと他覚的耳鳴り
本人だけ音を感じるのが「自覚的耳鳴り」で、他者も音を聞くことができるものを「他覚的耳鳴り」といいます。耳鳴りの大半は自覚的耳鳴りです。
一方、他覚的耳鳴りは、血圧の高い高齢の方などに起こり、耳のあたりに聴診器を当てると、血液の流れる音(ドクンドクン、あるいはザーッといった音)が聞こえます。また、耳の周囲の筋肉がけいれんする音(コツコツ、プツプツといった音)が聞こえる場合もあります。高血圧が原因となっている他覚的耳鳴りは、薬で血圧を下げると治まることがあります。
②低音性耳鳴りと高音性耳鳴り
●「ブーン」とか「ゴーッ」という低い音が聞こえる。
このような耳鳴りは「低音性耳鳴り」と呼ばれます。耳が詰まったような感じを伴い、気圧が急に変わったときや、ストレスがたまったときに起こりやすい症状です。低音性耳鳴りには危険な病気が潜んでいることはあまりありませんので、それほど心配しなくてもよい症状だとはいえます。
●「キーン」とか「ピーッ」という高い音が聞こえる。
このような金属音あるいは電子音のような音がするのは「高音性耳鳴り」といいます。持続的に聞こえるのが特徴で、耳をふさぐと大きく聞こえます。原因となることが多いのは、加齢による「老人性難聴」や、大きな騒音の中で仕事を続けるうちに起こる「騒音性難聴」(職業性難聴)などです。高音性耳鳴りの場合は、ひどくならないうちに治療を始めたほうがよい症状です。
③単音性耳鳴りと雑音性耳鳴り
音が1種類だけ聞こえるのが「単音性耳鳴り」で、異なる音がいくつか合わさって聞こえるのが「雑音性耳鳴り」です。雑音性耳鳴りは、単音性のものより複雑な原因がからんでいる可能性があります。
④慢性耳鳴りと突発性耳鳴り
「慢性耳鳴り」は、ときどき気になる状態をくり返しながら続く症状です。老人性難聴の多くは慢性耳鳴りです。
一方、突然激しい耳鳴りが起こるのが「突発性耳鳴り」です。こちらは、突発性難聴による耳鳴りが代表的です。耳鳴りを伴う病気としてはメニエール病も挙げられますが、メニエール病によって起こる耳鳴りは、慢性耳鳴りとして表れる場合も、突発性耳鳴りとして始まる場合もあります。
以上の区分に個々の耳鳴りを当てはめ、例えば、「自覚的耳鳴りで、高音性、単音性、慢性の症状」といった診立てをします。それを判断材料として、老人性難聴など原因になっている病気を特定していくことになります。
概して言うと、耳鳴りの多くが難聴を伴って起こります。つまり、音の聞こえにくさが、健康なときの聴覚とズレを生じ、それを苦痛に感じるのが耳鳴りなのです。なお、めまいも耳鳴りも、専門医が診断をする際には、問診票で苦痛度(どのくらい生活に支障を感じているか)を点数化して把握するようになっています。