今回は、信託の変更や終了の手続きについて解説します。※本連載は、税理士・菅野真美氏の著書、『老後の備え・相続から教育資金贈与、事業承継まで「信託」の基本と使い方がわかる本』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋し、「信託」のメリットと使い方をご紹介します。

原則は委託者・受託者・受益者の合意によるが・・・

当初の想定と違うことがいくつも起こって、このままでは、信託プロジェクトがうまくいかなくなりそうなことがしばしばあります。そのような場合、信託の変更をすることはできるのでしょうか。

 

信託の変更は、原則として委託者・受託者・受益者の三者の合意により可能となります(信託法149①)。委託者が存在していれば、信託期間中の変更は可能です。ただし、遺言信託は委託者が死亡し相続人が委託者の地位を引き継げないことから、委託者不在となり、原則的には、変更はできなくなります(信託法147)。

 

信託の変更のうち、信託の目的に反しないことが明らかであるときは受託者と受益者の合意で変更が可能です。変更後、委託者に通知します(信託法149②一)。信託の目的に反せず、受益者の利益に適合することが明らかであるときは、受託者が委託者や受益者に書面等で変更する旨を通知すれば可能となります(信託法149②二)。

 

受託者の利益を害しないことが明らかであるときは委託者と受益者が話し合って決め、受託者に意思表示すれば変更できますし(信託法149③一)、信託の目的に反せず、かつ、受託者の利益を害しないことが明らかであるときは、受益者が受託者に意思表示することにより信託の変更ができます。この場合は受託者から委託者に信託の変更の通知をすることになります(信託法149③二)。

 

このように、信託の変更により誰の利益を損なう可能性があるのかという観点に立って、信託の変更を事前に了承する人が決まります。信託の目的に反していない変更ならば、信託をプランニングした委託者の利益を害しないことから委託者の了承は不要となりますし、受益者の利益を害しないならば受益者の了承は不要となりますし、受託者の利益を害しないならば受託者の了承は不要となります。

 

[図表]信託を変更するときは誰の了承が必要になるのか

委託者と受益者の合意があれば「終了」は可能?

信託は、信託期間が満了した場合や、信託の目的が達成された場合は終了となります。信託財産が破産したような場合も終了となります。また、信託の受託者が受益権の全部を1年間自分の財産として保有しているような場合や、受託者が欠けて、新受託者が就任しない状態が1年間継続したときも信託は終了します(信託法163)。

 

信託の変更は委託者・受託者・受益者の合意で可能となりますが、「信託は大変でいいことが何もないからやめたい」と思った場合は信託を強制終了させることはできるのでしょうか。

 

この点については、委託者と受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができるとされています(信託法164①)。受託者は実行部隊の主役ですから、信託の変更に関しては受託者の意向も大事ですが、終了で重大な利害が生ずるのは委託者と受益者なので、2人の合意で可能になると考えます。ただし、受託者に不利になるようなときに終了して受託者に損害が生じた場合は、原則的には損害を賠償しなければならないことになります(信託法164②)。

老後の備え・相続から教育資金贈与、事業承継まで 「信託」の基本と使い方がわかる本

老後の備え・相続から教育資金贈与、事業承継まで 「信託」の基本と使い方がわかる本

菅野 真美

日本実業出版社

信託のメリットと使い方がよくわかります。成年後見、遺言、贈与の使い勝手の悪い部分を解決して、あなたの“想い”を叶えましょう。 <目次1> 第1章 老後の生活や資産承継のツールと課題を学ぼう(「老い」を自覚…

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