「ドル建て資産」を形成しておくことの重要性
アメリカの不動産に投資するもう1つの魅力は、〝通貨力〞にあるといっていいでしょう。ご存じのとおり、ドルは世界の基軸通貨です。原油や金の取引がドルベースとなっているのはそのためです。日本、中国、欧州などの主要国は莫大な外貨準備を保有していますが、その大半はドルです。ドルさえ持っていれば、万が一のときでも決済が可能だと誰もが認識しているのです。
ドル/円相場は2011年に1ドル=75円台半ばの安値を形成した後、ドル高基調が続いています。直近のレートは1ドル=110円。6年間でドルは対円で40%以上も値上がりしているのです。ドル建て資産を保有していた人は、為替差益だけで40%以上のリターンが得られた計算になります。
残念ながら私は、今後のドル/円相場を占える立場にありません。しかし、10年、20年という長いスパンでドル高基調が続く可能性もあると考えています。1つには、アメリカが2%を超える安定した経済成長を続けると見ていること。さらに、FRBが継続して利上げを実施する姿勢を見せているからにほかなりません。通貨の価値を見るうえで、その国の金利は非常に重要な役目を果たします。高い金利の通貨にお金は流れやすいからです。日本とアメリカを比較した場合、すでに長期金利(10年債利回り)は2%のひらきがあります。そのため、日本の銀行から円を借りて、為替市場で円を売ってドルを調達し、そのドルでもってアメリカに投資するという〝円キャリートレード〞が活発に行われています。もちろん、アメリカでテロの脅威が高まるなどすれば、一時的にドルが急落するリスクはあります。テロ以外にも例えば、2011年の東日本大震災のときにも円キャリートレードの巻き戻しが起きて、急激に円高が進みました。しかし、アメリカと日本の経済成長力と金利差を考えた場合、長期的にドル高が続く可能性も高いのではないでしょうか。だからこそ、アメリカの不動産というドル建て資産を形成しておくことが重要だと考えています。
日本の銀行で資金を調達すれば、金利1%前後も可能に
ただ、なかには「アメリカのREIT(不動産投資信託)でもいいのでは?」と思う人も多いでしょう。もちろん、それも1つの方法です。不動産価格が年平均で2%上昇しているのであれば、REITの値上がりも期待できます。しかし、現物の不動産を購入することには、REITにはない大きなメリットがあるのです。
1つには、経済活動に貢献していることがアメリカ国内で認められる点にあります。アメリカで不動産を購入する際には、現地で銀行口座を作って、そこに賃料収入が振り込まれ、年度ごとに税金を納めることになります。
2つめに、REIT以上に有利な条件で投資できる点があげられます。ただし、これは一部の投資家に限られます。一般的に、日本の銀行はアメリカの不動産を購入する際には融資をしてくれません。アメリカという遠く離れた不動産と、為替リスクという2つの側面から継続してモニタリングを行うのは困難だからです。しかし、資金調達の方法がないわけではありません。日本で不動産を取得して、繰り上げ返済などを行ってきた人であれば、融資枠に〝空き〞が生じます。その融資枠を利用して資金を調達し、アメリカ不動産に投資をすれば1%前後の金利負担で運用することも可能なのです。実際に、私の顧客のなかにも0%台の金利で日本の銀行から資金を調達し、アメリカの不動産を購入した人が何人もいます。保有する株や債券などを担保に、1%未満の金利で資金調達した人もいるのです。
もちろん、アメリカの銀行の住宅ローンを利用することもできます。しかし、非住居者である日本人が現地のローンを利用する場合、金利は4〜5%以上といった水準が基準になります。この金利差は計り知れません。
日本人にとって、アメリカは太平洋を隔てた遠い国です。現地の不動産市場に関して、アメリカ人との間に情報格差が生じるのも無理はありません。しかし、日本の銀行で資金を調達することができれば、その不利を補って余りあるメリットを享受することができるのです。日本人がアメリカに投資する最大のメリットは、この金利差にあるといってもいいでしょう。