「中古住宅」が8割を占めるアメリカの住宅市場
総務省が5年に一度発表している「住宅・土地統計調査」によると、2008年の日本における中古住宅の流通戸数は17万戸強です。新築を含む、全住宅に占める比率は15%弱にすぎません。しかし、アメリカに目を移すと新築と中古のシェアは逆転します。少々古いデータになりますが、2006年のアメリカの中古住宅の流通戸数は678万戸にも上ります。全住宅に占めるシェアは実に80%近くに達するのです。
[図表]既存住宅の流通シェアの日米比較
これだけ中古市場が発展しているため、アメリカでは、築年数は価格を決める大きな要因にはなりません。重要となるのはやはり立地です。広さも間取りも同じ築浅の物件と築30年を超える戸建て住宅が並んでいるとしましょう。日本では築30年を超えた物件の建物の価値は非常に低くなるため、築浅物件との価格には天と地ほどの差が生じます。しかし、アメリカでは、どちらもほぼ変わらない価格帯で売買されるものなのです。むしろ、DIYが一般的なアメリカでは年季の入った住宅のほうが好まれ、高い価格で取引されることもあります。
固定資産税の大半は「学校教育費」などに利用
その立地条件で特に重視されるのが「学区=スクール・ディストリクト」になります。アメリカには、スコア「10」を最高点にした「学区レート」が存在します。「10」に近いレートのエリアの物件ほど、高い値で取引される傾向があるのです。実は、アメリカでは不動産に課せられる固定資産税が日本よりも高く設定されています。州によっても異なりますが、年額で住宅の時価に対して2〜2.5%程度となります。時価評価額8000万円の物件ならば、160万円程度の固定資産税を払わなければなりません。これに対して日本は、時価とは別物の固定資産税評価額に1.4%の税率をかけた金額になります。一般的に固定資産税評価額は時価よりも割安となるため、アメリカよりもはるかに低い課税額となります。
このように割高なアメリカの固定資産税は、基本的に〝目的税化〞されています。その税収の大半は学校教育費などに利用されているのです。アメリカで不動産投資をするにあたって、固定資産税は確かに大きなコストになります。しかし、支払った税金が子どもたちの教育のために費やされ、その充実した教育機関を目当てに、新たな人口が流入し、回りまわってそのエリアの物件の評価額が上がる。そんな好循環を生み出しているのです。