2022年までに、日本の人口が2.1%減少する一方で・・・
前回の続きです。
これに対して、アメリカの不動産市場は必ずしも〝勝てる〞とはいいませんが、相対的にリスクは低いといえるでしょう。
まず、日本と異なり、アメリカの人口は右肩上がりで上昇し続けています。毎年100万人ほどの移民を受け入れているからです。IMF(国際通貨基金)の発表によれば、2022年までに日本の人口が2.1%減少すると予測されているなかで、アメリカは3.9%増加する見込みです。さらに「国連世界人口統計」によると、アメリカの人口は現在の3.22億人から2050年には4億人にまで増加すると予想されているのです。そのため、不動産に対する需要も年々高まっているわけです。
[図表1]アメリカと日本の人口推移
加えて、新興国ほどではありませんが、安定した経済成長を遂げています。2000年以降のGDP成長率はリーマンショックが起きた2008年、2009年を除いて2%前後を維持しています。同じくIMFの発表によれば、アメリカのGDPは今後5年間で22.4%増加すると予想されています。これは日本の10.9%増予想の倍以上の値で、先進国のなかでも群を抜いて高い予測値なのです。さらに、アメリカではインフレ率も同様に2%前後で推移しており、〝健全な物価上昇〞を続けています。そのため、不動産価格も一貫して右肩上がりなのです。
[図表2]各国GDP成長比較
大手格付け会社のスタンダード&プアーズ(S&P)が毎月発表しているS&Pケース・シラー住宅価格指数を見ると、その様子が一目でわかります。サブプライムショック、リーマンショックの影響で、2008年から2012年にかけて一時的な落ち込みはあるものの、ならして見れば40年以上も上昇を続けているのです。そして現状、サブプライムショック、リーマンショック後の落ち込みもほぼ取り戻しつつあります。バブル崩壊から30年弱経っても、なかなか浮上できない日本の不動産市場とは大きな差があります。そのような背景にあるのは、アメリカならではの不動産事情です。
[図表3] アメリカと日本の不動産価格推移の比較(1983年を基準)
アメリカ不動産市場は、需要に供給が追いつかない!?
2014年から2015年にかけて、アメリカの人口は247万人増加しています。この間の建築許可数は118万件です。単純比較すると、需要に対して供給が見合っていません。例えばカリフォルニア州のサンフランシスコエリア(コアベース統計地域)になると、ここ5年間で60万人も人口が増加しているのに、新築の建築許可は約6万件しか下りていないのです。
しかし、アメリカではどんなに急激に人口が増加しても、建築許可数が120万件を大幅に上回るのはまれです。なぜなら、新築住宅の建築確認に長い時間を要するからです。一般的な戸建て住宅を建てる際には建築確認から下付(OKをもらうこと)までに約10.8カ月、大規模な集合住宅を建設する際には約21.6カ月もかかるのです。
これに対して、日本の場合は約35日です。付け加えておくと、2014年から2015年にかけて、日本の人口は15万人減少しましたが、その間の建築許可数は92万件に上っています。人口が減少しているにもかかわらず、逆に人口が247万人増加しているアメリカと遜色ないほどの住宅が供給されているわけです。これでは、供給過剰に陥って不動産価格が下落してしまうのも無理はありません。
[図表4]人口増加数・建築許可数
一方、アメリカの新築住宅の供給戸数は建築確認の煩雑さもあってセーブされています。そのため、不動産価格はそもそも下落しにくいのです。
アメリカにおいて、高まる需要と限られた新築供給の穴を埋めているのは、巨大な中古市場です。