前回は、小規模宅地等の特例をどの土地に適用するとメリットを最大化できるのかを説明しました。今回は、「収益性の低い物件」とは具体的にどのような物件なのか、そして購入してしまった場合の対策などを見ていきます。

不動産の所有自体は有効な相続税対策だが・・・

キャッシュを不動産に換えて所有することで、将来の相続税額は大きく圧縮できます。

 

現金1億円は1億円の評価にしかなりようがありませんが、1億円で不動産を買うとその評価額は一般的に1億円より低くなります。土地は路線価を基本にして評価し、建物は固定資産税評価で評価するためです。また、賃貸不動産の場合は、その土地に対してさらに評価減ができます。

 

「相続税を下げたければ現金より不動産で持て」というのは相続税対策における1つのセオリーで、ほぼすべての資産家にお勧めできる方法なのですが、不動産であれば何を買ってもいいかというと、そうではありません。所有することで大きなリスクを負ってしまう要注意物件もあるので、気をつけなくてはなりません。

 

具体的にどのような物件が要注意なのかというと、次のような「収益性の低い不動産」です。

 

●維持費が割高なアパートやマンション・・・入ってくるお金よりメンテナンスなどで出ていくお金が大きく、負担になりがち

●借り手のつきにくいテナントビル・・・テナント事業の収支が赤字になるだけでなく、入居者集めにも頭を悩ませなくてはならない

●駅から遠い場所にあるコインパーキング・・・駐車する人が少ないため、利用料が見込めない

●資材置き場程度の雑種地や使えない空き地・・・固定資産税だけ毎年かかり収入を生まない

 

これらの物件は、収益性が低いにもかかわらず、相続税の課税対象資産にはしっかり含まれてしまいます。たとえば、賃貸アパートの建つ土地は「貸家建付地」になって評価減されますが、実際に評価減されるのは賃借人が入っている部分のみです。

 

評価の時点で6カ月を超えて入居者がいない、入居者の募集をしていないなど、実態として賃貸の用に供していない部屋は自用地とみなされ、貸家建付地の評価減は適用されません。つまり、部屋が入居者で埋まっていないと効果的な節税はできないのです。

 

相続税対策として不動産を購入するときは、こうした〝お荷物物件〟を買ってしまわないように気をつけてください。

相続前に、より収益性の高い不動産に変えていく

すでに所有してしまっている場合には、相続前に、より収益性の高い不動産に買い替えたり、建て替えたりすることが重要です。不動産を事前に取捨選択しておくことが節税に繋がるのです。

 

ちなみに、賃貸不動産を別の賃貸不動産に買い替えるときは、一定の要件を満たせば「事業用資産の買換えの特例」が使えます。この特例は、不動産を売って得た利益(譲渡所得)にかかる税金(譲渡所得税)を繰り延べることができるというものです。

 

譲渡資産と買換資産について一定の条件をクリアするなど複数の要件を満たす必要がありますが、本来売却時に納めるべき譲渡所得税が圧縮されるので、適用できれば税金圧縮に有効な特例です。

 

ただし、時限立法ということもあるため、興味のある方は適用期限も含めた詳細を専門家に尋ねていただいたほうが無難です。

本連載は、2014年11月29日刊行の書籍『開業医の相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

開業医の相続対策

開業医の相続対策

藤城 健作

幻冬舎メディアコンサルティング

開業医が保有する多額のキャッシュは、不動産に換えるだけで6~7割も相続税を圧縮できます。 本書では、さらに効果を高めるために、収益性と節税効果に優れた不動産を活用するノウハウや、MS法人を絡めた仕組みづくりなどを解…

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