前回は、土地の評価減につながるいくつかのポイントと、土地評価の計算方法について説明しました。今回は、土地の「利用区分」に着目した評価減の方法を見ていきます。

土地評価の高い「自用地」はなるべく奥に移す

今回は、土地の利用区分を使った評価減の方法を説明します。

 

1つの土地に複数の建物が建っている場合、その土地の利用状況、権利関係によって個別評価します。すると、キャッシュを不動産に換える際の評価減の効果が、より高まることがあります。

 

下記図表のような土地Aがあるとします。土地Aは全体で800㎡あり、路線価は15万円です。土地Aがすべて自宅用の土地だと、1億2000万円の評価額となります。これをBのように、賃貸不動産や駐車場をつくって利用区分ごとに個別の評価にします。すると、2190万円もの評価減ができます。この土地の場合は、相続税額にすると657万円の減額でした。

 

[図表]土地の利用区分を変える

 

330㎡までを自宅の敷地、半分にアパートを建てて貸家建付地に分け、さらに、自宅前に駐車場をつくってあえて旗竿地にすることで評価を下げます。

 

<Aの場合> 

路線価15万円×800㎡=1億2000万円の評価額

 

<Bの場合>

①アパート補正後路線価13万円×400㎡=5200万円の評価額

②自用地補正後路線価11万円×330㎡=3630万円の評価額

③駐車場補正後路線価14万円×70㎡=980万円の評価額

①〜③の評価額合計=9810万円

 

利用区分のポイントは、土地に面している道路から見て自宅を奥に持ってくることです。土地の評価は道路に面している部分のほうが高くなります。そのため、そもそも評価の高い自用地はなるべく奥にします。

 

また、Bでは自宅前に駐車場もつくり、自用地を旗竿地にして、さらに評価減をはかっています。ただし、後にその土地を売却する必要が出てきたとき、旗竿地や不整形地だと高く売れないという難点もあるので慎重に行わなければなりません。

家賃収入を法人や子に流す仕組みをつくっておく

このように、自宅の敷地が広く、さらに遊んでいる部分がある場合は、そこに賃貸不動産を建てて自宅と貸アパートに利用区分するのがお勧めです。

 

ただ連載12回で説明したように、賃貸不動産を建てる際は収益性を高く保てるように専門家のアドバイスが必要です。むやみにお金をかけて、維持コストや固定資産税などの負担ばかりが増えてしまうケースは多々あります。不動産会社や一部の税理士は、建物を建ててもらうことだけが狙いだからです。これでは相続税自体は圧縮できても、相続後の負担増によって効果は相殺されてしまうおそれがあります。

 

いずれ相続財産として子に渡すことを考えれば、収益性を考慮し、家賃収入は法人や子に流すように仕組みをつくるなどの計画性が求められます。

 

また、同じ敷地内に自宅と医院がある場合などは、分筆だけは被相続人の生前にしておきたいものです。というのも、小規模宅地等の特例を自宅と医院の両方にスムーズに使えるようにするためです。

 

分筆といっても費用はかかりますし、相続は発生から10カ月以内に相続税の申告・納税をしなければなりません。できるだけ生前にできることは片づけておき、相続後の費用や手間を少なくしておくのが先立つ者としての思いやりだと思います。

本連載は、2014年11月29日刊行の書籍『開業医の相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

開業医の相続対策

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藤城 健作

幻冬舎メディアコンサルティング

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