前回は、MS法人設立による節税メリットを説明しました。今回は、税理士によって相続税額が異なることがある理由と、不動産に詳しい税理士を見極める方法について見ていきます。

税理士によって「土地の評価額」が異なるだけに・・・

今回からは、「土地の評価」に話題を移します。「相続は、依頼する税理士によって相続税額が大きく異なることがある」という話を聞いたことがあるかもしれません。これはただの噂ではなく、真実です。なぜ税額に差が出るかというと、大半は税理士によって「土地の評価額」が異なるからです。

 

土地は「路線価」を基準にして評価することは連載第5回にて述べましたが、そのとき、もしかしたら「路線価×地積で単純に評価が出るなら、誰が計算しても同じだ。素人の自分にだってできる」と思った人がいるかもしれません。

 

ところが、実は土地の評価というのは一筋縄ではいかない〝クセもの〟で、評価する税理士や不動産鑑定士によって、大きく値が異なることがあるのです。

 

土地を評価するときの目のつけどころや特例の使いどころに優れた税理士は、評価を抑えて相続税額を低くできますが、土地評価に無頓着だったり、特例の使いどころが分かっていなかったりする税理士は、評価を高いまま計算して相続税を無駄に引き上げてしまいます。

 

そもそも土地の形状や位置は千差万別です。2つとして同じ土地は存在しません。それに、形状は使いやすい真四角で、地盤もしっかりしていて、坂も崖もない平坦で、周囲の環境も問題なしのパーフェクトな土地というのは、よほどのことがないとありません。形状がいびつだとか、近くに墓地があって環境がイマイチとか、埋立地で地盤が盤石でないなど、何かしらマイナスポイントがあるものです。

 

あるいは、路線価で計算すると、実際に取引されている周辺の土地の値段より随分高い評価が出てしまうことがあります。路線価は土地評価の重要な基準ではありますが、必ずしも実情を正しく数字に反映しているとは限りません。

 

土地にマイナスポイントがあったり、市場価格との乖離があったりする場合は、不動産鑑定を行うなどして、正しい評価額を求める必要があります。

 

実際、相続税の土地評価は10件に1件は時価よりも高くなるといわれています。また、優れた税理士や不動産鑑定士が評価のやり直しをすると、何千万円もの評価減ができることも日常茶飯事です。土地ごとの事情を見逃すことなく評価に組み込んでいくことが、土地評価のうえでは特に重要なのです。

「机上の調査」と「足を使う調査」を行う税理士を選ぶ

不動産に詳しい税理士や不動産鑑定士と、そうでない人との決定的な違いは、土地調査の精密さです。土地の評価をパパッと簡単に片づけたい税理士は、パソコンで路線価を調べて登記簿で当該土地の面積を調べ、地図から分かる評価減ポイントだけを評価に反映させることがあります。

 

一方、土地評価を念入りにする税理士や不動産鑑定士は、法務局から土地の登記簿や公図・地積測量図・建物図面などを入手して行う〝机上の調査〟を予備調査だと思っています。

 

それらを踏まえて、市町村役場や土木事務所などに赴き、当該土地の用途・建ぺい率・容積率などを調べたり、道路の種別、都市計画道路予定地の有無、その他自然公園法・河川法などの規制の有無などを確認したりします。

 

また、実際に現地に足を運んで、公図などの図面と現況を照らし合わせたり、周辺を歩いてみて資料には載っていないマイナスポイントがないかを探したりします。〝机上でする調査〟と〝足を使ってする調査〟の両方を組み合わせることで、ぬかりなく確実な評価を行うのです。

本連載は、2014年11月29日刊行の書籍『開業医の相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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