純資産=総資産から負債を差し引いた金額
Point 資産整理策① 純資産の額を減らし、自社株評価を下げる
前回までは、自社株評価を下げる方法として「利益圧縮策」を中心に述べてきました。これは決算書で言えば、損益計算書(P/L)の問題です。自社株評価を下げていくためには、もう1つの決算書である貸借対照表(B/S)にも注目していく必要があります。B/Sの内容を見直すことによって、資産価値のないものはB/Sから落として、純資産価額を減らしていくのです。
ところで、そもそも純資産とは何でしょうか? 単なる資産や総資産とは違いますが、その違いはおわかりでしょうか?
資産とは、B/Sの左側にある、現預金、売掛金、商品などの在庫、土地建物などの固定資産、さらには投資有価証券なども資産です。これらの合計が総資産といわれます。
それに対し、純資産とは総資産から負債を差し引いた金額であり、ネットの資産です。何らかの特定の資産を表しているものではありません。その点、勘違いのないようにご注意ください。
では、純資産は何からできているか、ご存じでしょうか? 純資産は大きく2つに分かれます。1つは株主が出資した資本金、もう1つは設立以来会社が毎期あげてきた利益の総和(累積)です。この2つの合計が純資産となってB/Sの右下に残っています。この後者の利益というのは、税引後の利益であり、株主への配当があった場合にはそれも控除した残りです。これがいわゆる「内部留保」といわれるものです。自社株の評価は、この資本金+内部留保してきた利益の合計で評価されるわけです。
B/Sの明細を見て「実際にはない資産」を洗い出す
さて、純資産額を減らして、自社株評価を下げるということはどういうことでしょうか? いくら株価を下げると言っても、できれば資産は減らしたくない、というのが人情でしょう。もちろん、やみくもに資産を減らすわけではありません。B/Sに資産は載っているけれども、その資産は本当にあるの? とか、あったとしてもB/Sに載っている金額の価値が本当にあるの? というものを探し出して、適切に処理をしていくということなのです。
一例を挙げてみましょう。
B/Sの有形固定資産のところに、社員の保養所として土地建物が8000万円載っていたとします。これはバブルの頃に買った別荘・研修所なのですが、最近はほとんど使われなくなっています。いわゆる遊休資産です。このような資産であっても、純資産を構成しているのです。自社株評価の時には、相続税評価がされ低くはなるでしょうが、実際の時価まで下がるかどうかはわかりません。
まして、類似業種比準価額方式では、簿価による純資産額が使われます。株価を大きく引き上げてしまう要因になるでしょう。この保養所を実際に売ったら1000万円だとすると、7000万円もの売却損が出て、利益の圧縮とともに純資産額も大きく圧縮されるのです。
ここまで大きくなくても、B/Sの明細を細かく見てみると、実際にはない資産、実際の価値よりも高く計上されている資産などをたくさん発見することができるのではないでしょうか? ぜひ、そのようなB/Sの見直しをしてみてください。純資産額の圧縮だけでなく利益も減ることにより、毎期の法人税を減らしていく効果も見込まれます。