今回は、「自社株評価」を下げる方法として、決算賞与の支給について見ていきます。※本連載は、会計事務所・経営者向けセミナー講演を年50回以上行い、相続・贈与に取り組む専門家ネットワーク発足などの活動にも携わる株式会社アックスコンサルティング代表取締役・広瀬元義氏が執筆・監修した『会社と家族を守る!事業の引継ぎ方と資産の残し方ポイント46』(あさ出版)の中から一部を抜粋し、オーナー社長が知っておくべき「自社株承継」の9つのポイントを解説します。

短期的な利益圧縮策として使われる「決算賞与の支給」

Point 利益圧縮策③ 決算賞与の支給

 

短期的な利益圧縮策の1つとして、よく用いられるのが決算賞与の支給です。事業承継に関係なく、予想以上の利益が出てしまった期には、実行しておられる社長も多いと思います。決算賞与は、できれば決算上の利益が確定してから支給したいところです。

 

ただし、税法上は決算期内に支給することを前提とし、次の3つの条件を満たした場合には、決算で未払で計上することも認めています。

 

 

①その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知をしていること

②すべての使用人に対し、その通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること

③通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること

 

 

たとえば、実効税率が30%で、利益が2000万円の会社が600万円の決算賞与を支給した場合はどうなるでしょうか。決算賞与を支給しなかったとすれば2000万円×30%で600万円を税金として納める必要があります。一方、決算賞与を実行すると(2000万円-600万円)×30%で税額は420万円となり、600万円との差額の180万円節税できることになります。

従業員には「一時的な措置」であると強調しておく

決算賞与を支給するメリットは、利益の圧縮だけではなく、もらった従業員のモチベーションアップにつながることです。その結果、業績が向上すれば願ったりかなったりですが、もらった従業員に「来年も出るかも」と期待をもたせてしまうデメリットも存在します。

 

翌年、決算賞与が出なかったら、モチベーションが下がってしまうので「みんなのおかげで今年だけはたくさん利益が上がったから、決算賞与を出せた」というように、あくまでも一時的な措置だと強調するのを忘れないでおきましょう。

 

決算賞与は、経営陣である社長を含む取締役には出せませんが、執行役員や使用人兼務役員(取締役営業部長など)には支給することが可能です。執行役員は、法律上、取締役ではありませんし、使用人兼務役員は使用人分としての賞与を出すことができるからです。

 

なお、経営陣である取締役には、翌期以降、税務署にあらかじめ届け出ることにより賞与をとり、これを損金にすることが可能です。これを「事前確定届出給与」といいます。これもぜひご活用ください。

本連載は、2017年2月26日刊行の書籍『会社と家族を守る!事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46』から抜粋したものです(2017年6月7日第2版)。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

会社と家族を守る! 事業の引継ぎ方と資産の残し方 ポイント46

会社と家族を守る! 事業の引継ぎ方と資産の残し方 ポイント46

広瀬 元義

株式会社あさ出版

誰に会社を任せるべきか、何から手をつけるべきか? 事業承継のプロたちが教える基本から具体策まで!

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