今回は、「自社株評価」を下げる方法として、「中小企業退職金共済制度」「中小企業経営強化税制」の活用術を見ていきます。※本連載は、会計事務所・経営者向けセミナー講演を年50回以上行い、相続・贈与に取り組む専門家ネットワーク発足などの活動にも携わる株式会社アックスコンサルティング代表取締役・広瀬元義氏が執筆・監修した『会社と家族を守る!事業の引継ぎ方と資産の残し方ポイント46』(あさ出版)の中から一部を抜粋し、オーナー社長が知っておくべき「自社株承継」の9つのポイントを解説します。

中小企業退職金共済制度」で継続的に利益を圧縮

Point 利益圧縮策④ 中小企業退職金共済制度の活用

 

前回は、社員に対する決算賞与という、どちらかというと一時的な利益圧縮策でした。それも有用ではありますが、事業承継の観点からすれば継続的に利益を圧縮し、さらには会社や社員のためになるような対策を取っていきたいものです。

 

そこで社員に対する退職金に備えつつ、利益圧縮にもつながる中小企業退職金共済の活用なども考えてみてはいかがでしょうか?社員の退職金については、退職給与規定などを作って引当金を計上している会社もありますが、税務上は損金として認められていません。実際に退職金を支給するまでは、損金に算入されないのです。

 

それに対し、中小企業退職金共済は、毎月掛金を支払った時に全額を損金に算入することができます。毎月退職金に備えて積んでいるものが、全部経費に落ちるわけです。

 

この中小企業退職金共済は、社員1名につき最高月額3万円まで掛金をかけることができます。社員が30人いれば毎月90万円、年間1080万円もの経費計上ができ、その分の利益を圧縮することができるのです。そのうえで、社員が退職したときには、社員に直接退職金が支払われますので社員も安心です。まさに一石二鳥の制度といえるでしょう。

設備投資を促す政策減税、「中小企業経営強化税制」

Point 利益圧縮策⑤ 中小企業経営強化税制の活用

 

事業承継の観点からは、継続的に利益を圧縮していく対策を取っていくことが望ましいことは先述したとおりです。たとえば、資産の購入や設備投資などにあたっては、できるだけ資産計上をせずに、経費(損金)で落としていく処理が望まれます。

 

そこで、設備投資を促すための政策減税などをフル活用していくことをおススメします。その1つに、2017年度税制改正で創設された「中小企業経営強化税制」があります。この税制は、中小事業者の「攻めの投資」を後押しするとともに、サービス産業も含めた中小企業の設備投資を支援するための税制です。

 

内容は下記の図表をご覧ください。この税制がすごいのは、生産性向上などの要件を満たせば「即時償却」、すなわち全額経費で落とせるということです。機械装置など高額なものであっても、全額経費で落とせますので、利益圧縮さらには純資産額の増加をも抑えることになります。

 

税制措置には、即時償却と税額控除がありますが、利益圧縮という観点から言えば、即時償却の方が効果があります。その他にも、中小企業投資促進税制などさまざまな政策減税がありますから、自社に合ったものを顧問税理士と相談してはいかがでしょうか?

 

[図表]中小企業経営強化税制の概要(2017年4月創設)

※事業の用に直接供される設備(生産棟設備)が対象。たとえば事務用器具備品、本店、寄宿舎等に係る建物付属設備等は対象外。
※事業の用に直接供される設備(生産棟設備)が対象。たとえば事務用器具備品、本店、寄宿舎等に係る建物付属設備等は対象外。

本連載は、2017年2月26日刊行の書籍『会社と家族を守る!事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46』から抜粋したものです(2017年6月7日第2版)。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

会社と家族を守る! 事業の引継ぎ方と資産の残し方 ポイント46

会社と家族を守る! 事業の引継ぎ方と資産の残し方 ポイント46

広瀬 元義

株式会社あさ出版

誰に会社を任せるべきか、何から手をつけるべきか? 事業承継のプロたちが教える基本から具体策まで!

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