今回は、働く妊産婦が行使できる「権利」について説明します。※本連載は、税理士法人恒輝・代表社員で税理士の榎本恵一氏、渡辺人事経営研究所・所長で特定社会保険労務士の渡辺峰男氏、人事戦略研究所・代表で社会保険労務士の吉田幸司氏、YMG林会計グループ・代表で税理士の林充之氏、税法・会計学の講師である柳綾子氏の共著、『知って得する年金・税金・雇用・健康保険の基礎知識 2018年版』(三和書籍)の中から一部を抜粋し、「結婚退職」「出産」に関する年金・税金の基礎知識を紹介します。

妊婦には「変形労働時間制」を断る権利がある

次に、妊娠中の女性や出産後1年未満の女性に対する保護制度です。妊娠中の女性で産前休暇を取らずに働いている人に対しては、母体保護の理由でいくつかの権利や仕事の制限があります。

 

まず、残業や深夜の勤務(午後10時から午前5時までの勤務)を断ることができます。休日出勤(法律で定められた1週間に1日の休み)も断ることができます。それから、フレックスタイム制度以外の変形労働時間制の適用を受けない権利もあります。

 

「変形労働時間制」とは、1日8時間、1週間40時間と法律で決められた労働時間の原則を「1週間、1か月、1年などの一定の期間を平均して」1日8時間、1週間40時間になるように労働時間を調整するという制度で、よく見かけるのは正月休暇を多くとるからその代わりに忙しい時期は1週間48時間勤務(1週間6日勤務)にするなどの方法で、会社が決めた勤務日カレンダーを使っているケースです。

 

妊娠中や産後1年未満の女性はこの制度の適用を断る権利を持っているので、仮に1週間6日勤務の週であっても最後の1日は休みにできます。ただし、フレックスタイム制は拒否することができません。

 

さらに、妊娠中は医師からの指導があれば休憩を多めに取ったり、出勤時間を遅らせたり、勤務中に診察を受ける時間を会社に請求する権利があります。

体の負担が少ない仕事へ配置転換を求めることも可能

また、今までしていた仕事から、体に負担がかからない仕事へ配置転換を求める権利があります。しかし、会社は無理やりこのような仕事を作る必要はなく、社内の従来からある仕事のなかで配置転換すればよいことになっています。

 

これらは、あくまでも本人が会社に請求して初めて認められる権利です。仮に会社に請求しなければこれらは権利として発生しません。これらの権利を行使した人に対して会社は、不利益な扱い(解雇、降格、給与の引下げなど)をすることは許されていません。

知って得する年金・税金・雇用・健康保険の基礎知識 2018年版

知って得する年金・税金・雇用・健康保険の基礎知識 2018年版

榎本 恵一,渡辺 峰男,吉田 幸司,林 充之,柳 綾子

三和書籍

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