今回は、親族外承継(M&A)における「社長の引継期間とその間の報酬」について説明します。※本連載では、島津会計税理士法人東京事務所長、事業承継コンサルティング株式会社代表取締役で、公認会計士/税理士として活躍する岸田康雄氏が、中小企業経営者のための「親族外」事業承継の進め方を説明します。

「1年から2年」が目安となる引継期間

前オーナー社長が親族外承継(M&A)と同時に取締役を辞任する場合でも、すぐに会社に来なくなってよいかというと、そうではない。通常は、買い手がスムーズに経営を承継できるように、新任の取締役への引継ぎ期間が必要となる。

 

引継期間は、1年から2年が目安である。最初の1年は常勤とし、次の1年は非常勤とするなど、勤務形態を途中で変えてもよい。

 

引継期間の長さは、取引先との関係も考慮しなければならない。新しい経営陣との信頼関係が築けていないうちに、旧経営陣がいなくなってしまうことは問題である。一定期間は、せめて名前だけでも旧経営陣の中に残ったほうがよい。

取締役を退任して退職金をもらう場合の報酬は?

取締役を退任して退職金をもらう場合は、税務上、報酬を50%以下に引き下げる必要がある。退任前と同じ水準の報酬を受け取ってしまうと、実質的には退任していないものとみなされ、退職慰労金が退職所得ではなく給与所得として課税されてしまうので注意が必要である。また、引継期間中の社会保険料の支払いや年金の受取りがどうなるかという問題もある。

 

引継期間の雇用に関する契約形態については、「雇用契約」もしくは「業務委託契約」とする方法がある。いずれの契約形態に関わらず、「常勤」か「非常勤」かによって社会保険と年金受給の対応が分かれる。

 

社会保険については、契約形態にかかわらず常勤で勤務している場合は社会保険への加入が原則必要であり、非常勤であれば加入は強制ではない。顧問契約であっても、勤務実態が常勤であれば社会保険料がかかる可能性がある。

 

また、年金については、常勤の場合は給与や報酬額によって受給額が変わるが、非常勤の場合は、給与や報酬額がいくらであっても年金を満額もらうことができる。

 

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