今回は、会社売却時に必ず解除すべき、オーナー経営者による個人保証について説明します。※本連載では、島津会計税理士法人東京事務所長、事業承継コンサルティング株式会社代表取締役で、公認会計士/税理士として活躍する岸田康雄氏が、中小企業経営者のための「親族外」事業承継の進め方を説明します。

個人保証の取り扱いは、交渉の早い段階で合意しておく

ほとんどの中小企業では、銀行から融資を受けるに際して、オーナー経営者の個人保証を行っている。この個人保証はオーナー社長にとってはかなりの精神的な負担になっているはずであり、親族外承継(M&A)によってこの負担が解消されることは親族外承継(M&A)の目的の一つであろう。

 

親族外承継(M&A)においては、銀行借入金を買い手が肩代わりすること、既存融資の個人保証を買い手が引継ぐことは当然の取引条件である。交渉プロセスにおいて、この個人保証の取り扱いについては、早い段階において合意しておくべきである。

 

対象会社の銀行借入金を買い手が肩代わりするのであれば、融資額に見合った資金を買い手が調達しなければならない。結果的に買い手にとってみれば、株式の取引価額と肩代わりする借入金の合計金額が実質的な買収金額となる。

 

また、オーナーの個人保証を買い手が肩代わりする場合には、それを銀行に承諾してもらわなければならない。事前に銀行へ相談に行き、承諾を得ておく必要がある。一般的には、買い手の信用力のほうが売り手個人の信用力を上回ることが多いため、個人保証の肩代わりが認められる可能性は高いだろう。

 

社長の不動産が金融機関からの借入の担保として差し入れられている場合も親族外承継(M&A)時に担保から外す必要があるが、この交渉についても個人保証を外す場合と同じである。

オーナーの親族が連帯保証しているケースにも要注意

親族外承継(M&A)と同時に解除すべき個人保証には、次のようなものが挙げられる。

 

●金融機関からの借入金への連帯保証

●機械設備や自動車などのリース契約の連帯保証

●金融機関やリース会社へ提供している担保

●店舗や事務所などの不動産の賃貸借契約の連帯保証

 

なお、オーナー経営者だけでなく、オーナーの親族が連帯保証しているケースや、対象会社の子会社の債務に対しても個人保証しているケースがあるので、同様に解除対象とすることを忘れてはならない。

 

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