今回は、M&Aの基本条件交渉において「基本合意書」を締結する意味とその効果を説明します。※本連載では、島津会計税理士法人東京事務所長、事業承継コンサルティング株式会社代表取締役で、公認会計士/税理士として活躍する岸田康雄氏が、中小企業経営者のための「親族外」事業承継の進め方を説明します。

最重要条件を先に合意すれば、細かい論点に注力できる

売り手と買い手候補が基本条件の交渉に合意できた場合、その内容を記載した「基本合意書」を締結することがある。その理由は、以下の2つの効果を期待するからである。

 

一つは、当事者双方が最も重要と考える条件を先に合意することによって、それ以降は細かい論点に注力できるようにすることである。特に、最も重要な論点である取引価額の目線が一致していれば、後から出てくる論点は大きな障害にはならない(もちろん、デュー・ディリジェンスで大問題が見つかった場合は別である)。取引価額に合意することができれば、それ以外の論点は交渉を通じて合意に至ることができるであろう。

取引から離脱させないための「抑止力」の意味も

もう一つは、交渉プロセスの後半に至って安易に取引から離脱しないよう、相手方に対して心理的な抑止力を効かせることである。法的拘束力がないとは言え、当事者双方の代表取締役が署名押印した書面を作成するわけであるから、通常のビジネス・マナーをわきまえる会社であれば、その書面で取り決めた事項を軽々しく破棄するようなことは行わないだろう。

 

基本合意書の締結の際に、ほとんどの買い手候補は、独占交渉権の付与を強く求めてくる。他の買い手候補と競わされるのは止めてほしいと考えるからである。この際、売り手としては、独占交渉権の付与と引き換えに、取引価額を引上げるように要求する戦術が有効である。

 

なお、デュー・ディリジェンスが実施された後は、売り手は、買い手候補からの減額要求に防戦する一方となるので、基本合意の段階で価格を可能な限り引上げておく必要がある。

 

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