今回は、企業の買い手による「デュー・ディリジェンス」実施の前に、売り手側が準備しておくべきことを紹介します。※本連載では、島津会計税理士法人東京事務所長、事業承継コンサルティング株式会社代表取締役で、公認会計士/税理士として活躍する岸田康雄氏が、中小企業経営者のための「親族外」事業承継の進め方を説明します。

要求された資料が出せない場合には・・・

買い手候補から公認会計士・弁護士によるデュー・ディリジェンスが実施されることになった。売り手としては、何をすればよいのだろうか。

 

買い手候補によるデュー・ディリジェンスの目的は、対象会社から開示された情報が正確なものであったかどうかを検証するとともに、買収を阻害する問題点がないかを確かめることにある。買い手は、弁護士、公認会計士、税理士などの専門家を総動員して対象会社の調査を行う。

 

売り手からの開示資料は、通常、対象会社の会議室あるいは外部の貸会議室などに分類・整理して備え付けられ(データ・ルームという。)、買い手の閲覧に供される。データ・ルームの大きさは対象会社の規模によって異なるが、中小企業の親族外承継(M&A)であれば、10人程度が作業できるような場所でよい。買い手側の専門家は、指定された日時にデータ・ルームの中で資料を閲覧する。

 

データ・ルーム開示と並行して、対象会社の経営陣による事業概況の説明会(マネジメント・プレゼンテーション)を行い、場合によっては、経理、人事など専門部署による質疑応答の機会が設けることもある。

 

デュー・ディリジェンスでは、初期段階で開示した情報よりも詳細な情報を開示することとなるため、対象会社の従業員の協力が不可欠である。また、対象会社の顧問税理士の協力を求めるべきである。例えば、顧問税理士に決算書、税務申告書、総勘定元帳のコピーの用意とデータ・ルーム内での質問対応を求める。

 

対象会社の従業員にとってデュー・ディリジェンスの対応は極めて厳しいものである。買い手側の弁護士や会計士が黒船のように迫ってくる親族外承継(M&A)において、対応する従業員の精神的、肉体的負担は大変なものである。

 

開示資料の準備、プレゼンテーションのための資料作成と予行演習、質問対応、追加の資料要求への対応など、作業は山ほどあるが、それらは日常業務を兼ねながら作業しなければならない。

 

買い手と対象会社では、日常業務の管理方針、管理手法が異なるため、買い手が当然用意しているだろうと想定して要求してきた資料や回答などが、対象会社にない場合があるだろう。

 

要求された資料を出せない場合には、買い手からは、「なぜ提出できないのか、代わりの資料をすぐに出せ。」と文句を言われ、挙句の果てには、「売り手側の対応には誠実さがない、売り手側の従業員は無能だ」と露骨に嫌味を言われるケースもある。

顧問税理士と相談し、法的瑕疵のない書類を整備

中小企業の場合、内部管理体制は完璧とは言えないため、要求された資料が作られていないケースも多い

 

たとえば、資金繰り表、事業計画、リース資産明細、借入金明細、担保物権明細、株主名簿、従業員名簿、組織図など、あって当然と思われるような資料がないことも珍しくはない。

 

この点、法的に必要とされる書類を作成していない場合には注意が必要である。たとえば、親族間での株式譲渡に際して取締役会の議事録や譲渡承認申請などの書面がない場合、日付を遡って作成せざるを得ないケースもある。

 

特に、株式譲渡に関する書類は極めて重要であり、それらがないと真の株主を確定できないなど、親族外承継(M&A)そのものを実行できなくする問題にもなりかねない。こうした場合、顧問税理士とよく相談して、法的な瑕疵がないように書類を整備することが必要である。

 

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