今回は、テキサス州立大学エンダウメントについて見ていきます。※本連載では、株式会社GCIアセット・マネジメント、投資信託事業グループの執行役員である太田創氏が、「米国名門大学のエンダウメント投資戦略」とは何かを、初心者にもわかりやすく説明します。

約3兆円もの運用資産を持つ「UTIMCO」

エンダウメントというと、東部アイビーリーグの名門校であるハーバード大学やイェール大学、西海岸のスタンフォード大学などが想起されるでしょう。しかし、南部のテキサス州立大学エンダウメント(以下、UTIMCO)は約3兆円の運用資産を持つ、知る人ぞ知る巨大エンダウメントです。

 

UTIMCOは、傘下にテキサス大学とテキサスA&M大学を抱え、それぞれビジネス専攻では全米第5位、石油工学では全米第1位のランキングを誇る大学です(US News & World Reportによる)。UTIMCOは伝統的資産に加え、積極的にオルタナティブ投資にも分散投資をしています。

 

 

下記図表1は、同エンダウメントの資産配分です。不動産・天然資源・金といった実物資産への投資配分が全体の約4分の1程度となっており、他大学のエンダウメントよりも配分比率は高めになっています。もちろん、ヘッジファンドをはじめとするオルタナティブ投資への投資比率も高いのですが、UTIMCOでは、伝統的・オルタナティブ資産全体で、株式投資(グラフ青パイ)、安定資産(グラフ黄緑パイ)、実物資産(グラフ黄色パイ)にわけて発表しています。おそらく意図するところは、リターンの源泉が株式に由来するものか、債券等の安定資産から生み出されるものか、実物資産の値上がり益から得られるのかを明示することだと思われます。

 

[図表1]UTIMCOの資産配分-2017年度(2017年8月末時点)

(注)https://www.utimco.orgより抜粋
(注)https://www.utimco.orgより抜粋

 

こうした資産配分から得られたリターンは、2017年度単年度で年率12.3%(ドル建て)となっています。リターンの内訳は下記図表2となりますが、2017年単年度で最も高いリターンを計上した資産クラスは天然資源でした。過去5年間と比べると、このセクターが大幅にリターンを向上させたことがわかります。

 

[図表2]UTIMCOの運用実績

(注)https://www.utimco.orgより抜粋
(注)https://www.utimco.orgより抜粋

2.4%を占める「金の資産配分率」の引き下げを検討

一部報道によれば、UTIMCOは、現在ポートフォリオの2.4%を占めている金投資の配分比率を引き下げる考えを持っているようです。その背景には、株価下落リスクが高まった際のリスクヘッジにはなるものの、過去5年間の金価格が1オンス=1670ドルから1330ドル程度まで下落していることがあります。同じ天然資源に投資するのであれば、より期待リターンが高い資産クラスにシフトしたほうがよいとの判断が伺えます。

 

 

UTIMCOは保有している金をすぐに売るつもりはないようですが、金売却については検討中と述べています。UTIMCOの動きは、個人投資家にも参考になるのではないでしょうか。株価が下落すると極端に投資家心理が悪くなる日本では、投資対象も極端に動かしがちです。しかしながら、リスクヘッジは事が起こってから対処するものではなく、事が起こる前から資産クラスに資産を振り向けておくことです。

 

金が必ずしもリスクヘッジの代表選手というわけではありませんが、UTIMCOのような巨大エンダウメントでも細かい分散投資を行っています。これほどの分散投資は難しいですが、個人投資家の資産配分も保有資産全体を鑑みながらリスク資産、安定資産、リスクヘッジ資産といった切り分け方で、ご自身のポートフォリオを構築してはいかがでしょうか。

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