相続は往々にしてトラブルが起こりやすく、また、事が起こってからでは解決の手段も限られてしまいます。本連載は、司法書士・不動産コンサルタント・税理士・不動産鑑定士・遺品整理士・事業承継コンサルタントの6名の著者が、具体的な実例と共に大切な資産の守り方を解説します。

祖父の名義になっている土地を、自分名義にしたい

<事例1>母から相続した土地が、祖父の名義のままだった

 

ご相談にいらしたEさんは、Eさんの祖父の名義となっている土地を、Eさん名義にすることをご希望されていました。

 

ご事情をお伺いすると、祖父が所有していた土地をEさんの母が相続して、この度母が亡くなったことにより、その土地をEさんが相続したとのこと。それでEさんがその土地を売りたいと考え、不動産業者に相談したところ、登記簿の名義をEさん名義に変更しないと売ることができないと、不動産業者に言われたと言います。

 

この土地が祖父から母に相続されるにあたっては、祖父が生前にその意思を、母を含めた3人の子に対して口頭で伝えたそうで、その後祖父が亡くなった際にも、他の2人の子はその土地を母が相続することに反対せず、相続した母は相続登記を行なっていませんでした。

 

そのため、その母が亡くなりEさんが相続したにもかかわらず、その土地の名義は今も祖父のままになっているというわけです。

 

相続登記をするためには、遺産分割協議書または遺言が必要です。しかし、祖父の相続が発生したとき生前にその意思が伝えられていたため、祖父の子全員はその土地に対して遺産分割協議をしておらず、遺産分割協議書も作成されていませんでした。もちろん、遺言もありません。

 

加えて、Eさんがご相談にいらしたときには、すでに母以外の2人の子、すなわちEさんにとって叔父と叔母にあたる方々は亡くなっていました。つまり祖父の子全員に相続が発生していたのです。

従兄弟姉妹全員で行うことになった「遺産分割協議」

〈Eさんの相続登記手続き〉

 

さて、この土地の登記簿に記録されている所有者名義を祖父からEさんに変更するには、いずれにしても、まずは祖父から母が当該不動産を相続したことのわかる書類が必要となります。

 

具体的には、このように祖父から生前に口頭で伝えられ、遺言が存在しないというケースの場合、本来ならば、祖父の子全員の実印が押された遺産分割協議書と、それぞれの印鑑証明書がそれに当たります。たとえ、その土地を相続してほしいと被相続人が口頭で相続人に伝えたという事実があったとしても、被相続人が遺言書を遺していなければ、法的な拘束力は何もないのです。

 

しかし、祖父の子全員が亡くなってしまった今現在、そうした遺産分割協議をすることも、遺産分割協議書を作成することもできません。このような場合は、祖父の子全員の相続人全員で、遺産分割協議をすることになります。つまり、EさんとEさんの従兄弟姉妹全員で、遺産分割協議書を作成しなくてはなりません。

 

Eさんが従兄弟姉妹全員に連絡を取ってみたところ、彼らは祖父がEさんの母にその土地を相続してほしいと彼らの父母に伝えたということも、彼らの父母がそのことに反対していなかったということも、直接の当事者ではないため知りませんでした。

 

しかし幸いにして、Eさんと従兄弟姉妹全員はたまに連絡を取り合う仲でした。そのため話が通じやすく、Eさんからその土地について従兄弟姉妹全員に対して話をしてもらった結果、皆、Eさんがこの土地を相続することを快く承諾してくれたのです。そこでさっそく、Eさんと従兄弟姉妹全員で遺産分割協議書を作成することに。

 

その後Eさんは無事に、その土地の登記簿に記載された祖父の名義をEさんのものへと変更をすることができました。

円満相続をかなえる本

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石川 宗徳,森田 努,島根 猛,佐藤 良久,近藤 俊之,幾島 光子

幻冬舎メディアコンサルティング

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