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内縁の妻に財産を・・・ある男性の「究極の相続税対策」とは?

相続に伴う遺産分割や事業承継の際に、家族間の争いが発生してしまうケースは少なくありません。本連載では、相続診断協会の編書、『笑顔で相続をむかえた家族 50の秘密』(日本法令)から一部を抜粋し、「争族」を避け、「笑顔相続」を実現させるポイントを解説していきます。

内縁の妻に遺贈すると、相続税が約2億円近く発生!?

<家系図>

 

<主な財産状況>

●自宅マンション 2億円

●上場自社株   8億円

●金融資産    3億円

  合計     13億円

 

相談者は、共同経営者とともに、40年前に医療器械の輸入業として創業しました。

 

順調に業績を伸ばし、30年ほど前に上場させ副社長まで務めましたが、現在は相談役という立場で、後進の指導を行っています。

 

妻は上場した頃にがんを患い、長い闘病生活の後、25年ほど前に死別しました。その後、相談者は、男手一つで2人の子供を育てたそうです。

 

長男は大学卒業後、米国の大学院に入学。卒業後帰国し、海外の製薬会社に勤務していましたが、10年ほど前に相談者の会社に入社し、現在は取締役を務めています。また、長男には中学生の息子と娘がいます。

 

長女は大学卒業後、総合商社の男性と結婚をし、現在は大阪に居住。小学生の娘が1人います。

 

2人の子供が社会人になった頃、相談者には仲良くなった女性ができ、現在も内縁関係を続けているそうです。子供を含め、会社や周りの人たちにも内縁の妻は紹介済みで、公の場にも同席しているとのこと。

 

5年ほど前に渋谷区恵比寿にマンションを購入し、内縁の妻との同居を始めたそうです。子供たちに気を遣って入籍はしていませんが、相当の年齢になったので、そろそろ将来のことをきちんと考えておきたいとのことです。

 

相談者の希望は、内縁の妻には、現在一緒に住んでいるマンションと金融資産の半分くらいを渡したいということ。相続診断士からの紹介で、相談を受けました。

 

相続税を計算すると、総資産が13億円で、相続税は5億円を超えることがわかりました。

 

相談者の意向は、20年間自分を支えてくれた内縁の妻については、死ぬまで困らせたくない。そのためには、自宅マンションと金融資産の半分くらいを遺してあげたい、ということです。

 

しかし、自宅マンションと金融資産の半分を内縁の妻に遺贈すると、2割加算もあり、内縁の妻の相続税は1億7000万円ほどになります。そのことを伝えると、金融資産はすべて納税でなくなってしまい、相談者亡き後の生活資金として遺せないことが判明。頭を抱えてしまいました。

 

上場自社株は、できれば売却せず現在役員をしている長男と長女に渡したい意向があります。このままでは、上場株式を処分しないと相続税が払えない状況です。

「入籍」すれば税制優遇も利用可能に

そこで、相談者の妻が亡くなってからの生活の様子を、じっくり聞いてみました。

 

妻亡き後、男手一つで2人の子供を献身的に育て、成人後も2人に気を遣って入籍をせずに生活を続けていました。長男と長女は、父親である相談者のことをとても尊敬しており、関係も良好です。また、2人とも内縁の妻との関係も良好なようでした。

 

というのも、2人はことあるごとに内縁の妻にいろいろと困り事を相談していたようで、本当の親子以上の仲になっていたのです。

 

そこで、「この際、入籍されてはいかがですか?」と提案しました。

 

入籍すれば、配偶者の税額軽減と小規模宅地の評価減も使えるので、税額は2億5000万円以下に下がります。また、内縁の妻という身分が配偶者に変わりますので、財産の半分を取得する権利を持つことになります。

 

当初相談者は「内縁の妻だからこそ、2人の子供との関係が良好なのかもしれない」と、入籍には否定的でした。しかし、20年間自分を献身的に支えてくれた内縁の妻の自分亡き後の生活を考えると、入籍することが最大の恩返しだということに気が付き、晴れて入籍することを決心しました。

 

そして、そのことを長男と長女に伝えたところ、大変喜んで祝福してくれたということでした。

 

相談者のそれまでの人生の在り方が、家族全員を納得させたのだと感じました。

 

相続税のためだけではないですが、相続税も考慮して、人生の決断をした相談者に祝福を送ります。

笑顔相続の秘密

再婚は、子供たちが受け取れる財産を半分奪う行為ですので、時に争いの種になります。本事案においては、相談者が妻亡き後、献身的に2人の子供を育てながら、内縁の妻や子供に気を遣い、生活をしていました。その相談者の誠意あふれる姿勢が、子供たちからの祝福という、とても美しいかたちで結実したのだと感じます。

 

笑顔相続は、笑顔家族を作っていくことから始まります。そのお手本のような家族ですね。

 

小川 実(おがわ・みのる)

一般社団法人 相続診断協会 代表理事

相続診断士、税理士

昭和38年12月8日、岐阜県生まれ。成城大学経済学部卒業。

河合康夫税理士事務所勤務、インベストメント・バンク勤務を経て、平成10年3月、税理士登録。平成14年4月、税理士法人HOP設立。

税理士8名、社会保険労務士2名、司法書士、行政書士が常駐する中小企業のワンストップサービス事務所HOPグループ代表。

一般社団法人 相続診断協会 

日本から「争族」をなくし、「笑顔相続」を広めることが「相続診断士」のミッションです。笑顔相続を広めるためには、生前に想いを残し伝えることが大切であると考え、その有効な方法としてエンディングノートの作成を推奨しています。
相続診断士の役割は、相談者に寄り添い、想いを聞き、問題点を明確にすることです。節税対策や遺産分割対策・遺言書の作成などは、税理士・弁護士・司法書士・行政書士などの士業と連携をして、最適なソリューションを提供します。
相続診断協会は、相続診断士とともに「想いを残す文化を創ります」。

写真は、代表理事の小川実氏。

著者紹介

連載エピソードに学ぶ「争族」を回避して「笑顔相続」を実現させるポイント

本連載は、2017年12月5日刊行の書籍『笑顔で相続をむかえた家族 50の秘密』(日本法令)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

 

笑顔で相続をむかえた家族 50の秘密

笑顔で相続をむかえた家族 50の秘密

編者:一般社団法人 相続診断協会

日本法令

相続とそれに伴う遺産分割や事業承継の場面で起こってしまう家族間の争い…本書ではそんな「争族」を避け、「笑顔相続」を実現させるための知識をご紹介。 遺言、生前贈与、信託、養子縁組、事業承継対策、相続税節税対策など…

 

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