売買は毎日同じことの繰り返しだが・・・
(本インタビューは前回からの続きです)
かんぽ時代の話は実に派手な感じだが、資金量にものを言わせて強引に買いあさっていたわけではない。証券会社の担当者を儲けさせることで、困ったときに助けてもらう、良い情報を流してもらうなど、およそディーラー出身とは思えないバランスの良さを武器に人間関係を大切にしていた。頭が切れるが姿勢は素直─坂本氏は、本当に感じのいい人物である。
かんぽを辞めて独立トレーダーになる時も、奥さんからの要望もあって、ファンドマネージャーならではの感覚で集めた高利回り債券、賃料収入が発生する不動産、自分で土地を手当てした太陽光発電と、生活費を稼ぐ足場を固めてから行動を取ったという。
最後に、スクールでの教え方について話してもらった。
─スクールでは、どんな教え方をするのですか?
僕自身は、ファンドマネージャー、証券ディーラー、個人投資家と3つの視点を併せ持っていることが〝売り〟です。値動きを読むのも実際にポジションを動かすのも、3つの目の使い分けです。そんな特徴を生かして僕は、短期と中長期、2つのミックスで運用を行います。
短期と中長期で資金は別れているのですが、垣根を低くして資金配分を流動的にしています。
スクールでも、そういう自分のやり方を伝えるのが主ですが、最も力を入れて伝えているのは、定点観測と予習復習です。
─具体的には?
売買は、毎日同じことの繰り返しなので、〝かたち〟をつくって日々、予習と復習を繰り返すのが正しい、と考えています。
手助けをしながら、まずは200銘柄をピックアップしてもらいます。その200銘柄はシンプルに騰落をチェックするだけで、そこから実際に手がける20銘柄を抜き出すのです。
最後に「20銘柄」を選定する理由は、相場に費やすことのできる時間です。兼業の個人投資家が観察して予習復習に充てられる時間は、1日あたり30分から1時間でしょう。その時間内できちんとこなせる限界が、20銘柄程度だという計算です。
〝ちがい〟を見つけ出すプロの視点とは?
─平日に必ず予習復習って、ハードルが高くありませんか?
人間ですから、さぼりたいときもあります。でも、とりあえず20銘柄をチェックすればいいので、それほど難しくはないんですよ。だから、飲みに行っても大丈夫です。
とにかく、広く見わたしながらも、手がける範囲を絞り、〝同じ目〟で観察を続けることが重要です。思いつきで飛びつき買いして「うわぁ、ヤラレた」なんてドタバタ劇から脱却するのが、多くの人にとって共通の課題ですから。
すると、落ち着いて〝ちがい〟を見つけることができます。上げ相場で動きがいい銘柄と悪い銘柄、あるいはセクターごとの差、同じ銘柄の動きに変化が出たなど、さまざまな〝ちがい〟ですね。
こういった観察をするプロの姿勢を理解してもらうために、サポートというか、フォローアップに手間をかけます。週に4回、動画を配信するのですが、1回が、最低でも30分くらいですかね。
─ずいぶん力を入れた取り組み方ですね。
やみくもに200銘柄選んでも意味がないので、その考え方についての説明が多くなります。
でも、誰でも実行できるようになりますし、行動範囲を限定しながらも、売買対象に選んだ20銘柄、リストアップした200銘柄を通じて市場全体を観察することになります。適宜入れ替えることも含めて、計画に沿った運用、落ち着いた売買が実現するという流れです。
─〝ちがい〟には、時代の流れによる変化も含まれますよね?
そうです。だから、手法がひとつではダメだと教えています。
林さんは「手法をひとつにしろ」と言いますが、林さんが言う「ひとつ」は、僕にとってはひとつではありません。流動的で、幅があり、変化していくことのできる「軸」なんです。
─地に足がついた「運用」の感覚を伝えているわけですね。
僕の話を断片的に聞いて売買している人もいるでしょうが、スクールには、やる気のある真面目な人に来てほしいと考えています。路線が地味なので、爆発的に人気の出るビジネスにはなり得ません。でも、それが投資家教育の王道だと思います。
基本的に、僕を含めたほとんどの人が凡人です。だから、天才的な感覚や技術を要求される方法なんて、現実には意味がありません。誰でも実行できる方法を、自分自身でもさらに追究しながら、それを個人投資家に伝え続けていきたいと思っています。