短期的に大儲けできる投資商品は絶対にない
─話を聞いていて感じるのは、YEN蔵さんの相場に対する柔軟性です。
林さんが実践したり教えているような姿勢と比べると、すごく柔軟なのかもしれません。
実際のトレードにおいては、時間軸が短くて手数(てかず)が多いのでしょう。トレードするうえで、「決め球をいくつも持ちたい」というイメージがあります。〝スキャルピング〟に分類されるような超短期の張り方はしませんけどね。
短期的に大儲けしようという人がいますが、そんな投資商品は絶対にありません。そんなあり得ないことを想像させる情報が活発に飛び交うのがマーケットですが、決して惑わされずに自分のトレードスタイルを確立することが大切です。
でも、そのスタイルを駆使して、いろいろな金融商品にチャレンジして決め球の数を増やしていくのが成長で、長続きにもつながると考えています。
─やはり、引き出しが多いと感じますね。
常に「対応力」を大切にしています。為替の世界では顧客の玉を受けて大幅マイナスでスタートさせられる、なんてことが当たり前なので、そこからどうするのかって考えるわけです。
あるいは大手が動くことで方向性が決まっちゃうから、自分の読みなんか関係なく、そのフロー(流れ)についていくしかないとか。
例えばドイツ銀行に買収された「バンカース銀行」は、少数精鋭でバカでかいポジションを動かすことから一目置かれる存在でした。僕も、「すごいヤツらだな」と感じていました。
頭取自らが「カネ貸して潰れた銀行はあるけど、投機で潰れた銀行はない」なんてうそぶいて、すごく積極的なトレードをする集団だったのです。
そんな世界にいたからなのか、常に状況への対応を意識します。チャートを見て売り買いしますが、「読んで当てる」のではなく対応です。チャートは、ポイントとなる場所を示してくれるだけですから。
儲からないときは素直に休む
─トレードで最も注意している点は何ですか?
儲けたあとの姿勢、ですかね。負けたときに取り返しにいくことよりも、勝ったあとにさらに取ろうとする姿勢が大きな危険をはらんでいると思うんです。
うまくいったあとは「次も」ということでトレードサイズを膨らませたくなりますが、気をつけないと対応できないレベルになっちゃう。どこが適正なのかという基準を決めるのは難しいのですが、儲けて気が大きくなったときでも、儲けた額をすっ飛ばすのを限度にして、それ以上にヤラレないようにしておくことが重要だと思っています。
─例えば1000万円が1億円になったとすると、すぐに10億円を意識してしまうのが一般的な発想ですよね。
そうでしょうね。ですが、10倍になったから「さらに10倍」と考えたって、その通りにはいきません。9000万円儲けた実績で9億円を取りにいくということですから。
膨らませてもいいけど、そのあとの状況に応じて縮小できるかどうか、つまり限定的に膨らませることにとどめられるかどうか、なのかもしれません。
僕自身のトレードを振り返りながら、チャンスのときにもっとサイズを膨らませてもいいのかなと感じながらも、意外と臆病に抑えています。
でも、儲かると思ったら必ず建てるようにしています。そうしないとリズムが壊れますから。
また、儲からないときは素直に休むということも確実に実行しています。
─変化への対応ですね。
相場がどうなるかなんて、わかりませんからね。ビジネスモデルを見て投資するって言いましたが、1年後にガラッと変わっていたって不思議でもなんでもありません。
だから為替について値幅で考えたとき、例えば「チャートが語っているから10円上がる」なんて発想は全く理解できません。せいぜい、1円、2円、3円というところじゃないですか、読めるのって。それを取って利益を積み重ねていくだけです。