個人の投資家が入り込む余地がない、首都・マニラ
新興国において不動産投資を行う際は、その国の首都(=一等地)を選ぶのが王道です。日本でいえば銀座、丸の内、表参道などです。政治や経済の中心地であり、国内外から人が集まるこのようなエリアなら、価値が暴落することはまずありません。
しかしフィリピンの場合、このロジックは当てはまりません。というより、首都マニラはすでに魅力的な投資対象として、潤沢な資金のある大企業や外資企業が入り込んでおり、個人の投資家が入り込む余地があまりないのです。
たとえばマニラでは、官民一体となってカジノを始めとするエンターテインメント施設やホテルなどリゾート開発を行っています。2015年に開業した「City of Dreams Manila」を中心に観光スポットとしての知名度も高まり、周辺地域はどんどん発展しています。
こうしたエリアの不動産価値がうなぎ上りになるのは間違いありませんが、すでに不動産価格は高値を付けてしまっているので、今後キャピタルゲインを狙うには適していないのです。
台風の上陸数・インフラ整備・治安の面で問題も
また、メトロ・マニラには立地上の問題もあります。とにかく台風の上陸が多いのです。フィリピンの建築技術は若干ですが日本より劣るため、雨漏りの心配が少なからずあります。さらに、メトロ・マニラは街の中心部以外のインフラ整備がまだ不十分です。そのため台風などで豪雨が降るとすぐに道路は冠水し、大渋滞が発生しています。
したがって、投資物件は中心部のオフィスと徒歩で行き来できる距離であることが必須条件になります。
このようなことから現在、その条件をクリアする物件の価格が高止まりの状態となっています。つまり、投資物件として割がいいとはいえない状況になりつつあるのです。
さらにフィリピンの首都マニラやその周辺のエリアでは治安のリスクもあります。皆さんのなかにもメトロ・マニラと聞くと「危険」というイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。だいぶ昔になりますが、1986年に起きた三井物産マニラ支店長の誘拐事件がいまだに印象に残っているという人もいるでしょう。
現在のメトロ・マニラは、経済成長に伴い当時よりはかなり治安は良くなりました。しかし、まだまだ日本とは比べられるレベルには達していません。
世界の各都市の生活の質や生活費、不動産などの順位を付ける海外専門サイトのNUMBEOでは、メトロ・マニラとフィリピン第2の都市セブ、そして東京、ロサンゼルスの治安を右図のように評価しています。
[図表]マニラ、セブ、東京、ロサンゼルスにおける治安の評価
東京はおろか、セブやロサンゼルスよりも治安が悪いことが分かります。あまり知られていませんが、フィリピンは銃社会です。登録制ですが合法で銃の所持が認められているため、いったんトラブルになると、その危険度は日本の比ではないのです。
また、公務員の汚職や賄賂の問題も根強く存在します。これらは地域差が大きいのですが、メトロ・マニラは悪いほうだと認識するべきでしょう。