信託財産の指定によっては、損益通算できないケースも
前回の続きです。
反対に、家族信託を利用することで発生するデメリットもあります。例えば、以下のようなものが主なデメリットになります。
①成年後見や遺言でなければできないこともある
家族信託は財産管理の手法です。成年後見とは違い、本人の代わりに住居の契約をしたり、介護サービスや入所施設の契約はできません。また遺言とは違い、身分に関する内容は法律的な効力を持ちませんので、子を認知したり未成年後見人を指定することはできません。
②損益通算ができない
損益通算とは、例えば、確定申告により1棟のアパートの収支が赤字になった時、収支が黒字の別のアパートや給与など、ほかの収入の黒字とまとめる(損益を通算する)ことで、所得税を節税することを言います。
具体的に言うと、収支が1000万円の黒字のアパートAと400万円の赤字のアパートBがある場合、損益通算をすれば、(1000万円マイナス400万円)の600万円に対して課税されていたものが、アパートAのみを信託財産としていた場合は、黒字分の1000万円にそのまま課税されることになります。
信託設計の仕組み作りは、それなりの手間とお金が必要
③税務申告の手間が増える
信託財産にかかる収益額の合計額が年間3万円以上ある場合は、毎年1月31日までに信託の計算書などを税務署に提出する必要があります。
④信託の設計に専門知識が必要
信託設計をする際には、さまざまな法律や税制を考慮しながら、その家族の希望を叶えられる「オーダーメイド」の仕組みを作る必要がありますので、専門知識が必要です。一般の方が独力で行うには、どうしても難しい部分がありますので、信託設計の専門家に依頼する必要があります。そのため、何度も打ち合わせをしながら、オーダーメイドの仕組みを作りますので、それなりの報酬が発生してしまいます。
報酬は専門家ごとに決められていますが、信託財産の中に不動産がある場合、登録免許税などの実費を除いて、信託する財産の評価額の1%が目安になります。