経済構成分子・人間を動かすのは、各々の欲望・欲求
経済はネットワークそのものです。
個人同士が繋がって1つの巨大なネットワークを作り、その上でお金が人から人へ移動しています。
このネットワークの構成分子である人間を動かしているのは、各々の欲望・欲求であり、経済は個人の欲望・欲求を起点に動く報酬(インセンティブ)のネットワークです。
時代によって人間の欲望は微妙に移り変わっているようですが、自分なりに現代社会の欲望を大別してみると、①本能的欲求、②金銭欲求、③承認欲求の3つに分けられます。
①本能的欲求は、衣食住の欲求、異性の興味を引きたいという欲求、家族への愛情など、生物が持つ根源的な欲求です。
②金銭欲求は、そのまま稼ぎたいという欲求です。
③承認欲求は、社会で存在を認められたいという欲求です。
本能的欲求に比べると、金銭欲求も承認欲求もいずれも歴史の浅い欲求です。
経済は人と人の繋がりが切れたり、新しく繋がったりと、ネットワーク全体が常に組み替えを繰り返していて流動的です。そして、このような動的なネットワークには共通する特徴が2つあります。
上位1%の富裕層が、世界全体の富の48%を所有!?
①極端な偏り
経済が欲望のダイナミックなネットワークだとすれば、このようなネットワークには「偏り」が自動的に生じます。
私たちは何かを選ぶ時に多くの人に支持されているものを選ぶ傾向があります。コンビニで歯磨き粉を買う時もアプリを選ぶ時も、多くの人が使っているものを信頼して選んだほうが失敗が少ないからです。
そして、商品を仕入れるお店も、皆に売れるものを中心に仕入れて棚の目立つところに並べ、それによってさらに商品が売れていくというサイクルを繰り返します。人気者がさらに人気者になっていく構造です。
結果的に上位と下位には途方もない偏り(格差)が発生します。一般的にはパレートの法則(上位2割が全体の8割を支える構造)とも呼ばれていますが、経済のような動的なネットワークでは自然に発生してしまう現象の1つです。
経済格差は特定の力のある人たちが暴利を貪った結果と考えられてしまいがちですが、実際は動的なネットワークの性質から避けられないものです。
世界経済で言うと、上位1%の富裕層が世界全体の富の48%を所有しており「上位80人」と「下位35億人」の所得がほぼ同じだとされています。
所得だけでなく消費においても同様で、身近な例で言うと、ソーシャルゲームではまさにその法則が当てはまります。無料で遊べるタイプだと全体の3%がお金を払い、さらにその中の上位10%で全体の売上の50%を占める(全体の0.3%が総売上の半分を占める)といったことが普通に起こります。
緊密度が「不安定性と不確実性」を上げる要因に
②不安定性と不確実性
偏りの性質とも関係していますが、動的ネットワークの、もう1つの特徴としてあげられるのが不安定性と不確実性の増大です。
全体があまりにも緊密に繋がり相互に作用しあう状態になると、先ほどの偏る性質も相まって、些細な事象が全体に及ぼす影響を予測するのが難しくなり、不安定な状態に陥ります。
1000年前を想像してみると、遠く離れた国で起こった出来事が自分たちの生活にリアルタイムで影響を及ぼすなんてことはありえなかったはずです。
しかし現代では、イギリスのEU離脱やアメリカ大統領選挙によって世界中の為替と市場はめまぐるしく動き、経済は常に不確実で、不安定な状態にさらされています。
まさに「繋がりすぎた世界」の弊害と言えます。
[図表]動的なネットワークの特徴