世界は「お金」「感情」「テクノロジー」の連立方程式で出来ている

株式会社メタップス代表取締役社長・佐藤航陽氏の最新著書を試し読み!

世界は「お金」「感情」「テクノロジー」の連立方程式で出来ている

お金や経済のあり方が変わり、仮想通貨やフィンテック、シェアリングエコノミーといった新しい仕組みが生まれています。本連載では、佐藤航陽氏の著書『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』から一部を抜粋し、「お金や経済とは何なのか?」、その正体を探っていきます。

未来の方向性は「お金・感情・テクノロジー」で決まる

企業の経営を通して一番勉強になったのが、世の中がどのように動いているかという力学に関してです。そしてこれらは経営に限らず色々な分野で成果を出している人が意識的にせよ無意識的にせよ持っているバランス感覚であることが徐々にわかってきました。表現や言葉は違うけれど、だいたい同じ構造が頭の中にありました。

 

それは、現実はおおよそ3つの異なるベクトルが併存し相互に影響を及ぼしており、それらが未来の方向性も決めている、という構造です。もちろん実際はもっと複雑で無数の要素があるのでしょうが、中でも影響力の強い3つに絞りました。「お金」「感情」「テクノロジー」の3つです。

 

①お金(経済)

 

3つの中で最も強力だと感じたのがお金(経済)です。アマゾンの奥地で自給自足をしている民族を除けば、地球上のほぼ全ての人は市場経済の影響力から逃れることができないためです。現状では「経済=お金」と言っても良いでしょう。

 

私たちは生活をするためにお金を稼ぎますし、人生の半分はそのために仕事をしています。お金は生きることと直結していますから影響力は絶大です。かつ、経済の構造は弱肉強食が大前提で、より強く大きいものがより弱く小さいものから奪うという構造になっています。経済は戦争と言われますがそのままで、淘汰と食物連鎖を繰り返しているようです。

 

不思議なことにお金の仕組みは学校などでは教わることはありません。大学や大学院で経済や経営について教わることはあっても、「お金」の本質そのものには触れられていないような気がします。学問的な賢さが実社会での生活力に直結しないのは、バスケと野球のように、それらが別のルールで運営される競技だからであると納得できました。

 

②感情(人間)

 

次に影響力の強いのが感情(共感・嫉妬・憎悪・愛情など)です。ある思想が全人類24の共感を得ることはないと思いますが、必ず一定の母集団を形成するのに役立ちます。その意味ではお金の影響力よりは若干劣りますが、とても強力な要素です。

 

人間は誰かを羨んだり嫉妬したりする反面、他人に共感したり自分を犠牲にしても何かに献身したりする生き物だと思います。いくらお金の性質を掴んで経済的な成功を収めても、他人の感情を無視しては長続きしません。社会から共感を得られないような事業は、協力してくれる人もいなくなり、最終的には自壊してしまいます。

 

お金の影響力は確かに強いですが、人の感情を無視しては持続することはできないというのがポイントです。

 

③テクノロジー

 

最後はテクノロジーですが、これは重視する人が最も少ない要素です。99.9%の人はテクノロジーのことを考えなくても問題なく生活できます。

 

ただ、テクノロジーは大きな変化のキッカケをいつでも作ってきました。自然や人間は時代によってそれほど変わるものではないですが、テクノロジーだけは目まぐるしく変わっていく問題児です。

 

かつ、テクノロジーには一定の流れがあり1つの発明が次の発明を連鎖的に引き起こしていきます。まるで地層のように重なって作られています。例えば、昨今の人工知能の進歩はネットに接続されたデバイスとデータが溢れたことが根底にありますし、コンピュータは半導体や電気などの複数の技術革新の結晶のような存在です。最近はこのテクノロジーの影響力が徐々に強まっています。

3つの要素のバランスが取れないと良い結果は出ない

頭の中のイメージを図に落とし込んでみると、異なるメカニズムで動く3つの要素が、それぞれ違うベクトルを指して進んでいます。それらの先端を結んだ三角形の中間が「現在」であり、その軌道が「未来」の方向性だと感じました。

 

[図表]

 

以上、3つのベクトルについて、お話ししましたが、引っ張る力はお金が一番強く、次に感情、最後がテクノロジーです。ただ、必ず3つのベクトルが揃っていないと現実ではうまく機能しないというのが特徴です。

 

例えば、他人の感情を無視して経済的な拡大だけを求めていって崩壊していく様を私たちはこれまで何度も見てきました。反対に、多くの人が共感してくれるようなプロジェクトもそこに関わる人たちの生活を支えられるだけの経済的価値を作り出せなければ、長期的には人は離れていってしまいます。誰でもまず最低限の衣食住が必要なためです。

 

同様に、テクノロジーも、倫理を無視したものは実現可能であってもなかなか世に出ることはありません。経済的・社会的価値が見つからなかった研究の予算が削減されてしまうことは日常茶飯事です。

 

これら3つのベクトルは、学校の科目で言えば体育と数学と美術ぐらい違うと感じます。しかも、お金・感情・テクノロジーの3つの要素が連動して1つの結果を作っているので厄介です。1つの要素ですらそこそこ複雑なのにそれが3つあり、相互に依存した関係性があるわけなのでハードルはさらに上がります。

 

竹中平蔵さんとお話をしていた時に「世の中は連立方程式のようなものだ」とおっしゃっていましたが、この表現はとてもしっくりきました。1つの数字をイジると全体が影響を受けますし、複数の式が連動して1つの答えが導かれる。自分よりもずっとはっきりとイメージができているのだろうと思いました。

 

本連載はお金や経済をテーマにしていますが、この3つのベクトルがいずれも重要であることは、読み進めていくとご理解いただけると思います。まずはお金のベクトルから紹介していきます。

お金2.0 新しい経済のルールと生き方

お金2.0 新しい経済のルールと生き方

佐藤 航陽

幻冬舎

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