前回は、社長が持つべき「キャッシュフロー」の概念について説明しました。今回は、企業の財産の流れを読み取ることができる「貸借対照表」の見方について改めて見ていきましょう。

「30%以上」が中小企業の自己資本比率の目標値

貸借対照表は、損益計算書のように「いつからいつまで」といった期間の概念はなく、ある一定時点(通常は決算期末)で、会社にどんな資産(財産やお金をもらえる権利など)がいくらあって、その資産を所有するために、どこからお金をひっぱってきたかを表しています。

 

要は、損益計算書で利益を出すために、会社を設立してから今日まで、どんな資産に投下して、その投下した資産は、どこからお金を調達しているかを表しているわけです。

 

損益計算書と同様に、貸借対照表もまた、数字の表を見ているだけでは、何がどうなっているのかよくわかりませんので、下記図表のように面積図にして視覚的に把握することをお勧めします。

 

[図表]貸借対照表面積図

貸借対照表は、バランスシート(B/S)といって、左側の資産と右側の負債と純資産の金額が必ず同じになります。貸借対照表の左側は、会社の持つ資産です。

 

流動資産とは、現金・預金と、売掛金・在庫などおおむね1年以内に現金化されるものですから、この割合が全体から見て高ければ、資金繰りが楽ということになります。固定資産とは、土地建物・機械など、損益計算書で利益を出すために投下した資産ですが、全体から見て、固定資産の割合が高いと、資金繰りが厳しいといえるでしょう。

 

これら左側の資産を、どうやって調達しているかが貸借対照表の右側です。たとえば、となりの会社が立派な本社ビルを建てたとします。これは、貸借対照表の左側です。立派な本社ビルが建つと、世間では「あの会社、儲かっているね」と噂になりますが、儲かったお金で本社を建てたか、あるいは全部借金かは、貸借対照表の右側を見なければわからないというわけです。

 

貸借対照表の右側は、大きく「負債」と「純資産」に分類されています。負債は他人資本、純資産は自己資本といいますが、これは、株主から見た場合の自分か他人かという意味です。純資産は、会社設立時に登記した資本金(途中で増資していれば、それも)と、会社を設立してから今までに、損益計算書で計上した利益(税引後)の合計です。

 

貸借対照表の合計を総資産といいますが、この総資産のうち、自己資本の割合がどのくらいあるかを自己資本比率といいます。

 

中小企業の自己資本比率の目標値は、30%以上です。総投資に対して、70%は他人から拝借しても、せめて30%は資本金と過去に稼いだ利益でまかなってくださいね、という意味です。そうすると、

 

①土地建物などを自社所有にせずに、賃借して総資産を減らす

②損益計算書で利益を計上する

 

以上の2つが、自己資本比率を上げる方法ということがわかります。

自己資本とは債務超過にならないための「執行猶予」

資本金と過去の利益の合計が自己資本ですが、過去に儲けた利益を食い込む赤字を計上すると、自己資本がマイナスになります。この状態を債務超過といいます。たとえば、現在自己資本1億円の会社は、今後、損益計算書で1億円以上の赤字を計上したら債務超過になります。

 

これから事業を承継しようとしている創業経営者は、あまりできのよろしくない後継者に、債務超過にならないような「執行猶予」をどれだけ与えて退任するか。そう考えると、儲かっていない事業を野放しにし続けたり、節税と称して無駄な「浪費」をしている場合ではありません。

本連載は、2014年2月27日刊行の書籍『低成長時代に業績を伸ばす社長の条件 』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

低成長時代に業績を伸ばす 社長の条件

低成長時代に業績を伸ばす 社長の条件

関根 威

幻冬舎メディアコンサルティング

バブル崩壊以降、日本経済は長期的な低迷を続けています。いまや日本企業の75%が法人税を払っていないのが現状です。このような低成長時代には、経営者は何を心がければいいのでしょうか――。 本書では、外部コンサルタント…

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