前回は、社長はいくら給料をもらうべきか、経常利益はまずいくらを目指すべきなのかを説明しました。今回は、近年盛んに勧められている「キャッシュフロー経営」の概念について見ていきましょう。

損益計算書には「借金の返済額」がのってこない

最近世の中では、キャッシュフロー経営が盛んに叫ばれていますが、私にはなぜそんなに騒がれているのかよくわかりません。また、会社は黒字でも、お金が回らなくなって「黒字倒産」することもあるから、これからはキャッシュフロー経営、などと専門家は言いますが、これも本当かどうかはわかりません。

 

黒字倒産というのは、損益計算書で利益は計上しているけれど、資金繰りがつかなくなって倒産するということですが、そもそも倒産に至るような会社は、そのほとんどが「粉飾決算(売り上げの水増し計上など)」していると言っても過言ではありませんから、損益計算書の「黒字」というのがウソなのです。

 

少々専門的な話になりますが、損益計算書というのは発生主義といって、モノを納品したら、代金をもらっていなくても収益である売り上げは計上されます。

 

逆に、モノを仕入れて代金を払っていなくても、費用である仕入れが計上されますから、例えば、損益計算書で100万円の利益でも、お金が100万円残っていることとは必ずしも一致しないのです。

 

そういう意味では、キャッシュフローは大事といえば大事ですが、社長のレベルで損益計算書からキャッシュフローを考える場合に、もっとも大事なのは、損益計算書には、借金の返済額がのってこないということです。

損益計算書の利益が「現金」として残らない理由とは?

銀行の借金というのは、あくまでも「貸し借り」ですから、たとえば1000万円銀行から借金しても、お金は増えますが、損益計算書の「収益」が増えるわけではありません。逆に、1000万円借金を返済しても、損益計算書の「費用」にはのらないのです。損益計算書にのってくるのは、あくまで借金したことによって払う「金利」だけです。

 

ここに、損益計算書の利益が、キャッシュである現金として残らない大きな原因があるわけです。

 

[図表]変動損益計算書

ここが理解できると、借金は、損益計算書の「利益」からしか返済できないということがおわかりいただけると思います。

 

そうなると、社長が知っておくべきキャッシュフローの概念は、損益計算書の「利益」と、借金の返済額とのバランスということになるわけです。詳しくは、次回紹介する貸借対照表で説明します。

本連載は、2014年2月27日刊行の書籍『低成長時代に業績を伸ばす社長の条件 』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

低成長時代に業績を伸ばす 社長の条件

低成長時代に業績を伸ばす 社長の条件

関根 威

幻冬舎メディアコンサルティング

バブル崩壊以降、日本経済は長期的な低迷を続けています。いまや日本企業の75%が法人税を払っていないのが現状です。このような低成長時代には、経営者は何を心がければいいのでしょうか――。 本書では、外部コンサルタント…

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