今回は、配偶者の財産の詳細が不明な場合に用いる「証拠収集手段」の例を見ていきます。※本連載は、弁護士として活躍する森公任氏、森元みのり氏による編著、『2分の1ルールだけでは解決できない 財産分与額算定・処理事例集』(新日本法規出版)の中から一部を抜粋し、財産分与の概要と、分与対象財産の確定方法を説明します。

任意開示が得られない、証拠に信用性がないときに検討

配偶者の管理していた財産について詳細が不明である場合、まずは任意開示を求めることになるが、任意開示が得られないときや開示された証拠に信用性がないときには証拠収集手段を検討することになる。

 

不動産に関しては登記情報等を調査することが比較的容易であり、問題となるのは主に流動資産である。弁護士会照会では口座名義人の同意がない限り回答が得られないことが多いため、裁判上の証拠収集手段を用いることが多い。

使用頻度が高いのは「調査嘱託」

中でも使用頻度が高いものは調査嘱託(民訴186)である。

 

調査嘱託では、配偶者の財産があると推測される金融機関等に対し、財産の有無及び額の回答を求める。銀行であれば支店まで特定して申し立てる必要がある。

 

別居前後に多額の資金移動等があることも想定し、基準時を含むある程度の期間にわたる取引明細を請求するのがよい。ただし、婚姻時から別居時までの取引明細全てといった包括的な申立ては探索的であるとして特別な事情の無い限りは採用されず、裁判所から期間を絞るよう指示されることとなる。

 

ときに配偶者の社内預金・退職金等が不明な場合には職場に対する調査嘱託を申し立てることとなるが、その申立て自体が配偶者に事実上不利益となることも考えられるため、採用の要否はある程度慎重に吟味されることとなる。

2分の1ルールだけでは解決できない 財産分与額算定・処理事例集

2分の1ルールだけでは解決できない 財産分与額算定・処理事例集

森 公任,森元 みのり

新日本法規出版

一筋縄ではいかない事件を柔軟に解決するために! ◆財産分与における実例を論点別に分析し、考慮要素や計算方法、解決案などを整理しています。 ◆事例から導かれた、実務上の留意点を「POINT」として掲げることにより、…

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