各別居期間にできた財産は、対象から除外される場合も
③別居と同居を繰り返している場合
<POINT>
各別居期間に形成された財産は基準時における財産分与対象財産から差し引くこともある。
<事案の概要>
原告:夫(会社員・40代後半)
被告:妻(パート・40代後半)
① 原告と被告は平成7年に婚姻し、平成13年に長男が生まれた。
② 原告が、平成20年6月に自宅を出て別居し、被告と長男は自宅へ残った(第1回別居)。このとき原告が自宅を出た理由は、夫婦間で離婚の話が持ち上がったことから、 冷却期間を置くためであった。自宅は原告名義、住宅ローンも原告名義であり、第1回 別居の期間中も、原告は住宅ローンを支払い続けていた。
③ 原告は、平成23年6月、被告とのやり直しを図るため、自宅へ戻り、被告、長男と再同居を開始した。なお、原告と被告は、平成20年11月から平成23年11月までの間、ほとんど連絡を取り合うこともなく、家計も別々であった。
④ 平成25年6月、被告と長男が自宅を出て以来、原告と被告は別居している(第2回別 居)。
⑤ 第1回別居から再同居に至る期間を、財産分与に当たって、どのように考慮するかが争点となった。
(参考:平成28年4月横浜家庭裁判所和解)
別居期間中の財産は、財産分与の対象から外れることに
<和解内容>
1 和解の方針
第1回別居から再同居に至るまでの期間が約3年間あり、その間夫婦間での連絡もなく、家計の管理も別であったことから、第1回別居から再同居に至るまでに形成された財産について、相互に寄与がないものとして、財産分与の対象から外すこととなった。
自宅不動産は、直近の時価をその価格とし、第1回別居時から再同居に至るまでの間の価格の変動については考慮に入れなかった。住宅ローンは、第1回別居時から再同居に至るまでの間に原告が弁済した金額を、第2回別居時における残ローン額に加算した。
そうすると、婚姻時の原告名義財産が約600万円、第1回目の別居時点における夫婦共有財産が900万円、再同居開始時の夫婦共有財産が1,500万円、第2回別居時点における夫婦共有財産が2,000万円であった。
2 具体的な計算方法
第2回別居時の財産から、婚姻時の原告名義財産(特有財産)を除外し、さらに、第1回別居時から再同居時までに増加した金額を控除し、財産分与対象財産を算出すると、以下のとおりになる。
2,000万円-600万円-(1,500万円-900万円)=800万円
本事例では、被告名義財産がほぼ0円であったことから、800万円の2分の1である400万円を原告から被告に対し支払う、との和解が成立した。
この話は次回に続く。