経営では様々な「矛盾」に直面するが・・・
お客さまの満足と社員の満足――お客さまの満足を満たすには、社員が手間ひまかけて、努力して、いいサービスを提供しなければならない。それでは、社員はいつまで経っても満足できないのか? お客さまの満足と社員の満足、どっちが先なのか?
利益追求と社会貢献――会社は社会の公器だから、社会に何らかの貢献をしなければならない。でも、利益が出なければ潰れてしまうし、給料だって払えない。道徳なき経済は罪悪、経済なき道徳は寝言・・・。
短期戦略と長期戦略――短期的な利益と長期的な利益、どちらを優先すべきか? 短期の利益ばかり追っている部署は、いつも危なっかしい。でも、長期的な視野で営業している部署は、なかなか足下の利益がついてこない。
制度と風土、規律と放任――部下に仕事を任せるというけど、どこまで任せたらいいのか? 仕事のプロセスをすべてマニュアル管理しようとしたが、社員の心までは管理できない。制度と風土、規律と放任、どちらが正しい経営手法なのか。
給料とやりがい――社員は、やりがいのある仕事ができれば満足するのか? それともやっぱり給料か?
優しさと厳しさ――社員にあまり厳しいことばっかり言っていると辞めちゃうから、我慢して優しく接していたら、最近つけ上がってきた。
もともと、右か左かはっきりしなければ気が済まない性格の私は、これら二項対立する矛盾に決着をつけたかったのですが、結局すべてにおいて勝負がつきませんでした。
矛盾する事項の間でバランスをとり続けるのが社長
どちらが本当は大事なのか、割り切れたほうが楽に決まっています。しかし、こちらを立てればあちらが立たず、あちらを立てればこちらが立たず、という相矛盾する事項を同時にやろうとしているのが経営です。
そうなると、社長というのは、常に振り子を振り続けること。対極にある考え方の間で、バランスをとり続けていくこと。
自分とは対岸にある考え方、向こう岸にある考え方を否定せずに、自分の考え方とのバランスをとっていく、そういう相矛盾を把持する姿勢が、結局のところその社長の器をつくるのではないかと思うのです。